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ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

Play out the play!~2023年観劇ベスト10

2023年舞台ベスト10 。シェイクスピアを中心に見つつも、新たな発見、素晴らしい俳優さんや演出に出会う2023年でした。

今年は劇場で見たのが24本、配信・映像が14本。計38本。うち15本がシェイクスピア作品(翻案含む)。

1.兎、波を走る(NODA・MAP東京芸術劇場プレイハウス)

野田地図は毎回がーん!ってなるんですが、今回は特に楔を打ち込まれたような。そして野田さん自身の楔も初めて見たんじゃないかなと思う。傷だらけになりながら、血を流しながら見る感じ。芝居が終わると磔になるかのような。それらをエモいなどという軽い言葉で表してはいけない。

劇場というラビット・ホール〜『兎、波を走る』東京芸術劇場プレイハウス - je suis dans la vie

2.エンジェルス・イン・アメリカ(上村聡史 演出/新国立劇場

新国立の小劇場のかたい椅子に耐えながらの二日間。今上演時間調べたら、第一部が約3時間半、二部が約4時間でした...。8時間耐久レースか、鈴鹿なのか、はたまた演劇フジロックか。とはいえよかった。作品も俳優も演出も。なかなか再演難しいと思うがまたいつか見たいです。新国立劇場は早く椅子をなんとかしてください。

終わりの始まり:起~『エンジェルス・イン・アメリカ』第一部「ミレニアム迫る」新国立劇場小劇場 - je suis dans la vie

「祝福せよ」は聖なる祈りか禍々しい呪文か〜『エンジェルス・イン・アメリカ』第二部「ペレストロイカ」新国立劇場小劇場 - je suis dans la vie

3.星の王子さまサン=テグジュペリからの手紙―森山開次 演出/KAAT)

ダンスと音楽で綴る星の王子さま。心が洗われる体験だった。アオイヤマダさんの王子さまはもちろん、言葉を超えた踊りの表現は、世界で一番翻訳されている「星の王子さま」の新しい翻訳。美術も衣装も、そして音楽。唯一声を発する坂本美雨さんの歌が舞台に溶けるようなしなやかさ。

4.ペリクリーズ(中屋敷法仁 演出/演劇集団円

中屋敷法仁さんのキレキレでスタイリッシュな演出。衣装、美術を濃いターコイズブルーでまとめ、コンテンポラリーダンスのような振付で目にも楽しく。膨大な台詞、奇想天外な旅物語を分かりやすく楽しく。クルーズに出たような爽快感。

5.『L. G.が目覚めた夜』~ロリエ・ゴードロが目覚めた夜~ (山上優 演出/国際演劇協会日本センター 戯曲翻訳部会/Tokyo concerts lab.)

リーディング公演。ケベック戯曲。詩のように研ぎ澄まされたテキスト、熟練のキャスト、笠松泰洋さんの即興ピアノ演奏と台詞のマリアージュとみどころ満載。インプロヴィゼーション的表現の驚きときらめきがあったのはリーディングという形式ならではかも。

グザヴィエ・ドランが製作したドラマ『ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと』の原作。ブシャールは『トム・アット・ザ・ファーム』原作者。 ドランが演じたエリオット役の玉置祐也さん(演劇集団円)が好演。

6.ハムレット野村萬斎 演出/世田谷パブリックシアター

多くはないけどいろんなハムレットを見てて、これはちょっと別格。萬斎さんのクローディアスは魅力的すぎるなあ。ハムレットだけでなく野村萬斎シェークスピアシリーズやらないかしら。あと完全狂言様式のハムレットって難しいのかな。見てみたい。

7.『尺には尺を』&『終わりよければすべてよし』(鵜山仁 演出/新国立劇場

新国立劇場シェイクスピアシリーズ。ダークコメディを交互上演。両作ともシェイクスピア後期の「問題劇」とされ、解釈が難しい。コメディだがハッピーエンドでもなくバッドエンドともいえない。両者ともベッドトリックが使われるのも問題作たる所以。そしてどちらも主人公が女性で、精神的に自立して意思が強い。

今回の演出ではフェミニズム観点を強く打ち出しており、現代における最適解といえるのではないでしょうか。最後まで意思を貫き戦うイザベラ(尺尺)を演じたソニンさん、たおやかさと芯の強さのあるヘレナ(終わり~)を演じた中島朋子さんは現代的な女性像。それを支える那須佐代子さんの助演には、戯曲と現実をつなげるようなシスターフッドを感じました。

女性が魅力的なプログラムでしたが、男性キャストも素敵。アンジェロ(尺尺)を演じた岡本健一さんはは特に戯曲をより深めた解釈と、戯曲を超える魅力&色気でした。フランス王(終わり~)もコミカルでかっこいい王様!バートラム(終わり~)の浦井健司さんも凛々しく上品ながらもコミカルなダメ男。わきもキャスト同士のきずなの強さを感じました。亀田佳明さんいいですね。

そして新国立劇場は早く椅子をなんとかしてください(二度目)。

8.ヘンリー四世(G.GARAGE////ウエストエンドスタジオ)

河内大和さん率いるG.GARAGE///(ジーガレージ)の「シェイクスピア道シリーズ。前回のリチャード二世と同じく、細長い花道を舞台に、セットも最小限のコンパクトな舞台。ただし前回は花道の先を正面にしてコの字に客席が囲む形だったが、今回は花道の両脇に客席配置で、どちらも正面になる。

そんな風に毎回少しずつ変化はあれど、和的な衣装や、最小限の小物やセットなど、ひとつの型ができつつあり、今後も続けてみていきたいプロダクション。

河内さんのフォルスタッフかわいかったー!

9.眠くなっちゃった(ケムリ研究室/世田谷パブリックシアター

久しぶりの舞台俳優・北村有起哉さんでした...ありがとうケラさん。やっぱり舞台の北村さんは格別。

3位の『星の王子さま』、4位の『ペリクリーズ』でも感じたのですが、コンテンポラリーダンスなどの表現を駆使した演劇が最近すごい好き。

コントロールできないのは夢も現実も同じ〜ケムリ研究室No.3『眠くなっちゃった』世田谷パブリックシアター - je suis dans la vie

10.金夢島(太陽劇団東京芸術劇場プレイハウス

海外からの演劇は最近やっと見られるようになりうれしいところ。ここの劇団の制作方法は難しい面もあるが、今の日本の演劇であんまりない気が。現地での公演も見てみたい。

演劇は世界に何をもたらすのか~太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)『金夢島 L’ÎLE D’OR Kanemu-Jima』東京芸術劇場プレイハウス - je suis dans la vie

 

次点:『ハートランド』(ゆうめい)、『蜘蛛巣城』(赤堀雅秋)、『レイディマクベス』、『たかが世界の終わり』(テアトル新宿・配信公演のスクリーン上映)

  • ゆうめいはテキストすごくよくて、ただ自分の中でまだ演劇が続いてる感じがありランキングに入れませんでした。戯曲、配役、美術、演出、すべてこれからも続けて見ていきたい劇団ではあります。
  • 藤原季節さんの出演作品を2023年は3作(『祈冬』、『たかが世界の終わり』、『人魂を届けに』(イキウメ))見ました。
  • 玉置祐也さんの出演作も3作(『ペリクリーズ』、『犬と独裁者』(劇団印象)、『L.G.が目覚めた夜』)見ました。

2022年は「俳優目当てで芝居を観ない」というしばりを設けてましたが、藤原季節さん、玉置裕也さん出演の作品はすべてよかったので今後このしばりは緩めます。2024年も基本は「シェイクスピア作品」を中心に観劇予定。