je suis dans la vie

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配信観劇その28『ジョン王(King John)』(ストラトフォードフェスティバル)

ストラトフォードフェスの配信。配信はすでに終了しており、思い出し感想です。

これ翻訳読んだんだけど、あんまり惹かれるとこがなくて。多分、タイトルロールのジョン王があんまり魅力的ではないんですよね…。

ジョン王 (白水Uブックス (13))

ジョン王 (白水Uブックス (13))

 

そもそも兄のリチャード一世が亡くなり、正統な王位継承者のアーサーが幼いから、どさくさまぎれに王様になった人で。摂政みたいな感じでいればいいのに、欲張って王位に執着するから、余計に器の小ささや王位に相応しくないのが丸わかりなキャラクター。読んでる間は、前王の落とし胤フィリップとか腹心のヒューバートの存在が面白かったので、なんでタイトルが「ジョン王」なのかなあ、と。まあその辺は私の読み取りが足りないのもあるんですが。

今回の演出ではジョン王が「愚王」で、ギャグぎりぎりな、ともすればバカ殿っぽい。あーこういう風に見せると面白いんだなーという演出でなかなか楽しめました。

例えばアーサー暗殺をヒューバートに命じたのに、政局が変わってやっぱり暗殺しない方がよかったと思いヒューバートをなじるとことか理不尽な言い草なんだけど。

「なんで俺が言ったからって、ほいほい暗殺しちゃうんだよ〜!そこは空気読んで?分かるよね?ヤバイからやめましょうよ〜ってあの時俺のこと止めてくれたらよかったのに〜!」

って体プルプル痙攣までする。お前が言うたんやないかーい!ってハリセンでツッコミたい。こんな上司いたら最悪。てか結構いるけど。

でもヒューバートが「実は殺してませーん!」って言ったら「それホンマかー!」ってガバッと立ち直る。

シラーの『メアリ・スチュアート』でエリザベスがメアリの処刑でごちゃごちゃ言う下りなんかは割とドラマチックなんだけど、ジョン王はとにかく浅はか。そこを裸の王様のごとくアホに見せる。

そこをギャグだけにしないのは、ヒューバートやフィリップの忠誠、息子の愛情などを見せて、王が王たる所以は崩さない。ジョン王がずっと大きな王冠をかぶって、派手なマントを羽織っているのもおかしくも物悲しい。悲劇と喜劇が背中合わせなうまい見せ方。

舞台は長方形の平土間。セットは椅子とかくらいでシンプル。客席に降りる小さな階段を少し使う。フィリップの1人語りの時は客いじりも。奥に二階があり、場面転換でうまく使う感じ。ここの使い方でうまいのはアーサーの死ぬところ。飛び降りなので、どうやって表現するのかな?と気になっていたが、落ちたアーサーがジョン王のマントの下から出てくるのも効果的。殺したのはジョン王、という直接的な意味も。

ジョン王を見ながら思い出したのは、どこぞの国の政治家ではなく、ジョン王って野球チームの監督みたいだな〜、と。(注:以下カープファンの独り言と思って読み流してください。)というのもカープが監督変わってからちょっと(いやかなり)不調でしてね…。まあ細かいこというと監督のせいだけではないんですけど。どんなに国(チーム)に実績があって部下(選手やコーチ)は優秀で、突然出てきた前王の落とし胤(今年やっと覚醒した堂林選手)が活躍しても、王様(監督)の采配が噛み合わないとダメなのかしらという時があり。そして敵国の王(GのH監督)の狡猾な采配にのまれてしまう予感すらあり…。

なーんて王様と野球の監督では立場がそもそも違いますけどね。監督は雇われですし。

でも、ジョン王以外の王様だって周りに盛り立ててもらったり、優秀な部下や妻のおかげだったりするのも多いし。実質自分は何もしなくてもなんとかなってる場合もあったりするし。彼はなぜここまで愚王なのか。結局、ジョン王はいらぬ欲目を出した時点で王の器ではなかったのだなー。

まあカープの監督だけがジョン王じゃないですけどね。日ハムの栗山監督なんかはわりと弁えて成功した場合のジョン王な感じ。次のスター監督(正統な王位継承者)までのつなぎっぽさもありつつも、たまに優勝したりそつなくこなし、オーナー(王族のプレッシャー?)とファン(民衆)の信頼のバランスも取る優秀な監督(王様)感がある。オリとか阪神の監督なんか常にジョン王感あるし(権威にも民衆の期待にも負けて自滅していく感じが)。あ、これもしかしたら色んなスポーツの監督でもいけそうな感じ?ちなみにGのH監督(何故伏せ字…)はヘンリー8世感があります。

 

さい芸のジョン王は残念ながら公演中止となってしまいましたが、フィリップ役は久しぶりにさい芸シェイクスピアに戻ってきた小栗旬、ジョン王は横田栄治さん、敵国のフランス王は吉田さんと、これまた違った演出になりそうな配役。なんとか同じキャスティングで実現してほしいところです。