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配信観劇その17『冬物語(Winter’s Tale)』(グローブ座、2018)

グローブ座配信、今回は『冬物語』。5/31までの配信。

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先日チークバイジョウルの現代的な演出のを見たばかり。👉配信観劇その③『The Winter’s Tale (冬物語)』(Cheek by Jowl, Barbican Centre, 2017) - je suis dans la vie

ある程度話が頭に入ってはいたものの、演出が違うので印象がまたもやガラッと変わりました。

衣装はアジアっぽい、タイの王族のような衣装。こちらは意外性があるのかなと思えば、シチリアイスラム圏とキリスト教の境にあるからなんだそうです。

今回はTwitterid:saebou先生の大学の講義がオープンになっており、そちらを見て勉強できました。ありがたい。

話はシェイクスピアの色んな要素がたくさん盛り込まれてて、バイキング料理のような。嫉妬深くて悩みがちな王様、王に翻弄される悲劇の女王、周りに反対され燃え上がる若いカップル、お調子者の狂言回し。悲劇でもあり喜劇でもあり。

シチリア王のリオンティーズの意味不明な嫉妬が物語の発端。この王様、終始子供っぽい弱っちい男。暴君なのだが。臣下に諭されたり命令聞いてもらえなかったり、情けない。チークバイジョウルのリオンティーズは、品の良い神経質そうな美男な雰囲気だったが、こちらは器の小さい情けない上司。そういう人に権力持たせると、こんなひどい事が起こりますよー、でも臣下が優秀だと解決しますよー、みたいな話になっていた。

今回は女性のパワーが全体的に強い演出で、特にハーマイオニーの侍女・ポーライナ(ポーリーナ)が肝っ玉母ちゃんぽくて良かった。見た目も筋肉質でたくましい。

リオンティーズがハーマイオニーを牢獄に入れたときも

「はあ?こがぁなええ嫁いない!何考えとるんじゃ。かばちたれるのもたいがいにしんさい!なにしょーるん、こんばかたれ!」

な勢いで、王様なのにバンバン言いまくる。(セリフは意訳です。インチキ広島弁です。)

こんな言いまくるのにクビにもされないし、罰も受けないので、ポーライナは優秀なんでしょう。第二幕では後悔に嘆くリオンティーズに

「そうよ、あんたのせいでみな死んだんじゃ。再婚?そがぁなん無理。あがぁなええ嫁他に見つかるわけないじゃろう。たいぎい男じゃのう。ちゃんと反省してがんばりんさい!王様じゃろ!」

と傷に塩を塗っているのか、励ましているのか(セリフは意訳です。インチキ広島弁は雰囲気です)。弱ったリオンティーズは黙っていうことを聞いている有様。っていうか、リオンティーズがこんだけ弱ったのって、絶対毎日ポーライナに嫌味言われまくったせいだよね…。

この後、実はハーマイオニーは生きてて、16年間もポーライナが匿っててとラストに分かるのだけど、ポーライナすごいな〜(かなりひどいけど)と。ハーマイオニーは良く夫を許すなあと思うけど、その辺もポーライナがうまく誘導したんかなと。

第二幕の若いカップル、フロリゼルとパーディタも現代的な衣装で、ティーン恋愛ドラマのような雰囲気。パーディタは男の子とも対等な態度で、物怖じしない。

男性は他も情けなく、ポリクシニーズは息子の結婚に陰険に反対したり器がちっちゃいし、パーディタの兄もチャラ男だし、アンティゴナスはさっくり熊にやられちゃう。男性は弱々しい表現で、女性は強くたくましく懐が深い。

パーディタの義父の羊飼いも今回は義母設定で、ちょっとお調子者だが、パーディタの結婚に尽力するので、全体的に女性が色々頑張る内容になっていた。