je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

『プレイタイム』(シアターコクーン、2020.07.12)

7月12日の公演の日に、上演後に配信観劇。

ストリーミング鑑賞チケットは当日までの販売でしたが、好評だったためオンデマンド配信しています。

↓9月2日まで。

見る際はお部屋の明かりを消してぜひ。

 

構成・演出:梅田哲也、演出・美術:杉原邦生というダブル演出。杉原さんの演出は初見、お友達が好きな演出家なので気になってたがやっと見られた。杉原初心者には良い入り口かな?

どこからどこまで梅田さんで、杉原さんなのか分からなかったけど、それもまたよし。映像構成の部分は梅田さん、舞台セットなんかは杉原さんかな?

岸田國士『恋愛恐怖病』などをベースにした、逃げれば追う追えば逃げるという男女のやりとりがメイン。現在のコロナ禍で、役者同士も触れ合うことを制限される中では、この題材はぴったり。吊り橋のようなセットに揺れる2人、敷き詰められた大きな布が波のように揺らめき。しなやかな森山未来さんの動きがシンクロする。ストーリーがあるようなないような。

今回の配信は「新しい演劇のアプローチ」という観点でありつつ、その場限りではない可能性をも提示した成功例になるかと思う。実験的ではあるが完成度が高い。今後同じような形で上演・配信していくことの意義も見出せるのではと。

というのも色々配信を見てきて、やはりライブには敵わないというのは言わずもがなである。そこをどうしても割り切れない層も多くいるし、見られるならなんでもと割り切って見たとしてもなんかしら足りない部分を感じる。理由の大半は生で見るリアリティの有無なわけだが、ざっくり言えば2次元と3次元の差、立体感のなさが大きい。そこの部分を今回はかなり解消している。

ナショナルシアターなどはNTLのために映像化に慣れているので、技術が長けているが、舞台を映像化するのは技術的な面で難しい。撮る側の技量もだし、そのための機材への投資も。

今回はただ舞台をストリーミングするのでなく、映像作品としてのクオリティも高い。その中で森山未来さんと黒木華さんという、舞台でも映像でも映える役者をキャスティングしたのもとても良かった。2人とも舞台であることと、カメラに映ることのバランスが取れていたのではと思う。もちろん演出の妙もある。一回限りの公演であるという緊張感も功を奏している。

配信観劇の良いところは、今まで様々な理由(遠方に住んでいるとか、家庭の事情や身体的理由など)でライブの演劇を体験できない人たちへ届ける機会ができたということだ。配信はあくまでその場しのぎ、なんてことではなく、前向きに早い段階で新しいアプローチをしたことは本当に素晴らしい。もちろん軽々しくは言えないけれど、文化芸術はこういう時に飛躍する可能性も大きい。落ち込むことも多いけれど、とてもとてもすくいあげられた気持ちになった。