je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

「沈まぬ太陽」

山崎豊子作品で長く映像化されてなかった大作。我が国のナショナルフラッグがモデルとあっては、そこら中から反対があったでしょうなー。JALが弱ってる今だからこそできたのか?なーんて邪推したり。
この作品を映画化する時に、一番問題になったのはそれなんだろうけど、私はそもそもあんな長い話をどうやって脚本にするんだろう・・・ってずっと思ってました。
いややろうと思えばできるんでしょうよ。3部作くらいにするとか。実際、当初は2部作の予定だったらしいし。それを1作でって聞いたときも、部分的に映画化かな−?と思ってたら、ちゃんと全部見せてました。すげえ。
脚本の西岡琢也さま(様ってってつけとこうっと)だからこそなんですけどね。オープニングだけで、うまいわ〜とうなってしまった。あの象のシーンだけでも見る価値あり。
途中10分の休憩があるとはいえ、3時間以上の長丁場。でも、たるむことなく一気に見せました。前半は、主人公・恩地の労働組合活動からアカレッテル貼られ、僻地へ左遷されまくり人生と、御巣鷹山篇をからませる荒技、しかしこれが飽きさせず良かった。御巣鷹山篇は涙涙・・・。ちょうど事故の頃、私は中学生くらいで、助かったKさんという女の子が同じ年だったのでよく覚えている(しかも学校に同姓同名の子がいたのでちょっとした騒ぎに)。当時の新聞記事も、おぼろげながら覚えている。特に乱れた文字での家族への最後の言葉・・・。あれは当時も衝撃だった。
木村多江のアル中未亡人、はまりすぎ。薄幸の女性を演じたら、いまのとこナンバーワンではなかろうか。他の遺族役の人が霞んだよ。そしてそんな未亡人に冷たく補償金の話をする山田辰夫さんがこれまた陰険たらし〜。実は山田さん、これが遺作なんですね。ワンシーンで、二人のからみはないのに、殺伐とした演技、まさに技。すごいシーンだった。
後半の会長室編、三浦友和が好演。原作読んでたので、うーんギラギラ欲望の行天役に三浦さんか−、とちょっと腑に落ちなかったのですが、いやはやすいません。役者・三浦友和、抑えた演技ながら底の深さを感じました。恩地への嫉妬、出世欲、ギラギラドロドロしながら人間味ある行天が影の主役。
あと、エロ官僚役のいっけいさん(まんまやん)&接待お色気ホステス役小島聖(これもまんまやん)が、ちょっとしか出てこないのに、ものすごい存在感でした。いっけいさんが小島さんの体をなめ回すように見るとことか、二人がいちゃいちゃするとことか、ともすればコントですが、すげー。
他にもいっぱいいい役者さんがちょっとずつ出てきて、あ!と思うんだけどね。
惜しむらくは、何故沈まぬ太陽なのか、恩地か何故、ひどい扱いを受けていてもなお自分の意志を変えなかったのか・・・。戦中派というキーワードがあるのですが、そこがあまり多くは語られなかった。
私が好きなシーンは、恩地が空港で、元旦に1番機に手を振って見送るシーンです。この人は、たぶん飛行機も好きだったんだろう、会社も好きだったんだろう・・・と思わせる。JAL批判映画として、JAL側は抗議してるらしいですが、むしろ見た方がいいと思う。全然批判してないし。企業愛という、今では風化寸前の日本の心があるのだから。
とはいっても、あくまで「フィクション」なので、そういうのは考えずに見ても楽しめます。
あと、最後の恩地の表情ね、あー良かったな−と。原作読むと、主人公のあまりの波瀾万丈っぷりにいたたまれない気持ちになったのですが、映画で結構昇華された。