je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

cinema

美しさの定義への挑戦~『美しき仕事』4Kレストア版@横浜ブルグ13シアター1(横浜フランス映画祭2024)

横浜フランス映画祭、前回2022年から二年ぶりの開催。この映画祭は1993年に始まり、2006年からは東京に場所を移し横浜の地名が外れていたが、2018年からまた横浜へ。横浜市民で仏語学習者としては気になるイベント。 横浜へ戻ってきたのは、横浜がリヨンと姉…

Murder on the film~2023映画マイベスト

遅ればせながら(書いてるの3月...)、2023年の映画マイベスト。 1.イニシェリン島の精霊 見たのが2023年の1月だったのですが、不動の一位でした。物語もアイルランドの美しい景色もコリン・ファレルの困り眉もロバのジェニーもすべて完璧。そして何より私…

愛さなくてはという逃れられない呪いについて~『たかが世界の終わり』テアトル新宿

dai7sedaizikken.wixsite.com 知らせるために、 言うために、 ただ言うためだけに、 間近に迫った手の施しようのない僕の死を、 "pour annoncer, dire, seulement dire, ma mort prochaine et irrémédiable” (”Juste la fin du monde” Jean-Luc Lagarce 「…

心を可視化する~『パリの記憶(Revoir Paris)』(ネタバレなし)

日仏学院の「映画批評月間」で『パリの記憶』(Revoir Paris)を見てきました。本公開されていない(公開も未定)なので、重要なネタバレなしで。 www.youtube.com ロシア語の通訳をしているミア(ヴィルジニー・エフィラ)はカフェでテロの襲撃に巻き込まれ…

近づいては離れ~『ジェーンとシャルロット』(Jane par Sharlotte)渋谷シネクイント

Jane 2023年7月16日(日)ジェーンバーキン、パリの自宅で死去。 日本での映画公開が決まっており、監督のシャルロットが来日予定だったのだが、ジェーンの看病のために中止になったとの報を聞き、そこまで悪いのかと心配していた折の知らせ。Triste Dimanch…

おフランス版の波よ聞いてくれっへェェ〜!〜『午前4時にパリの夜は明ける』

あらすじ(公式より) 1981年、パリ。結婚生活が終わりを迎え、ひとりで子供たちを養うことになったエリザベート(シャルロット・ゲンズブール)は、深夜放送のラジオ番組の仕事に就くことに。そこで出会った少女、タルラ(ノエ・アビタ)は家出をして外で寝…

我愛すゆえに、我あり~『エゴイスト』ヒューマントラストシネマ渋谷

あらすじ(公式より) 14 歳で⺟を失い、⽥舎町でゲイである⾃分を隠して鬱屈とした思春期を過ごした浩輔(鈴木亮平)。今は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、仕事が終われば気の置けない友人たちと気ままな時間を過ごしている。そんな彼が…

人情派探偵誕生~『終末の探偵』横浜ジャックアンドベティ(2回鑑賞)

あらすじ 連城新次郎(北村有起哉)は喫茶店「KENT」の物置を住処に、しがない探偵業を営む。ギャンブル好きで借金だらけ、酒癖も悪くけんかっ早い。 ある時、顔なじみのヤクザ、笠原組のNo.2阿見恭一(松角洋平)に借金をチャラにしてもらうかわりに、中国…

ボンボヤージュボンボヤージュ~『コンパートメントNo.6』シネマカリテ

あらすじ(公式より) モスクワに留学中のフィンランド人学生ラウラ(セイディ・ハーラ)。彼女の、古代のペトログリフ(岩面彫刻)を見に行く旅は、恋人にドタキャンされ、急遽一人旅に。そんな彼女が寝台列車6号コンパートメントに乗り合わせたのは、モス…

コーディリアのいないリア王〜『すべてうまくいきますように』Bunkamuraル・シネマ

あらすじ(公式より) 小説家のエマニュエル(ソフィー・マルソー)は、85歳の父アンドレ(アンドレ・デュソリエ)が脳卒中で倒れたという報せを受け病院へと駆けつける。意識を取り戻した父は、身体の自由がきかないという現実が受け入れられず、人生を終わ…

張子の虎の巨大な阿呆船〜『シャドウプレイ完全版』ジャック&ベティ

あらすじ(公式より) 2013年、広州の再開発地区で立ち退き賠償をめぐり、 住民の暴動が起こったその日、 開発責任者のタン(チャン・ソンウェン)が屋上から転落死する。事故か他殺か、捜査に乗り出した 若手刑事のヤン(ジン・ボーラン)は、 捜査線上に浮か…

安心感に満ちた鑑賞体験〜『夜、鳥たちが啼く』ジャック&ベティ

売れない小説家・慎一(山田裕貴)の住む家に居候することになった友人の元妻・裕子(松本まりか)とその幼い息子・アキラ。母子は母屋に住み、慎一は隣のプレハブで生活するという奇妙な半同居生活。慎一は昼はコピー機のメンテナンスの仕事、夜は小説を書…

ロバの名前はジェニーだよ!〜『イニシェリン島の精霊』

きーたぞきたぞマーティン・マクドナーの新作! ということで待ちきれず公開初日に行ってまいりました。 あらすじ 舞台は本土が内戦に揺れる1923年、アイルランドの小さな島・イニシェリン島。馬や牛を飼い細々と妹とともに暮らすパードリック(コリン・ファ…

2022年映画ベスト10

1月も終わろうとしていますが、いまさらの昨年映画ベスト10です。 劇場で見たのが57本(新作28本・旧作29本)。配信等で見たのが85本。計142本。 ランキングは新作からのみです。 1位 パリ13区 見た時から、他とは違う感覚がした。映像も音楽も物語も。誰か…

白い闇と透明な黒の魔術的映像〜『ノベンバー』横浜シネマリン

おまじないの思い出 小学生くらいの時に、ローティーン向けの雑誌を持ってきてた同級生がいて、その中の「好きな人を振り向かせるおまじない」みたいな特集記事を嬉々として皆で見ていた。それは「白魔術」とかいう類で、誰かを呪ったりしないし、自分にも悪…

「ほら、怖くない」ってことはやっぱりない~『LOVE LIFE』2回目&3回目鑑賞感想

年末と年始に『LOVE LIFE』を横浜シネマ・ジャックアンドベティで鑑賞。 大まかな感想は1回目でと変わらず、ですが、2回目3回目でいろいろ気づいたことなど。 2回目鑑賞(2022年12月27日) 私、撮影監督の山本英夫さんの画が大好きでして。『殺し屋1』…

寄り添う小さな二つの魂〜『秘密の森の、その向こう』Bunkamuraル・シネマ

ネタバレあります。 とは言っても、日本版のフライヤーに思いきりネタバレが書いてあり、だいたい話は予想がつくようになっている。作品のきもは謎解きではないので、分かっていても問題はない。 8歳の少女ネリーが、介護施設の部屋をひとつひとつ訪ねながら…

香港版“風と木の詩”~『ブエノスアイレス』4K版 シネマジャック&ベティ

最初に見たのはいったいいつだったか、映画館で見たのかレンタルビデオで見たのか。今となってはレンタルビデオで見るという行為も貴重な体験だが。 ただ、いつかイグアスの滝を見にに行きたい、という気持ちだけは覚えている。 1997年公開というと四半世紀…

分かり合えなさを分かり合う〜『LOVE LIFE』Bunkamuraル・シネマ

※ネタバレあります 深田晃司監督新作『LOVE LIFE』。 物語は主人公・大沢妙子(木村文乃)が7歳になる息子・敬太(嶋田鉄太)と、再婚した夫・二郎(永山絢斗)との家庭風景から始まる。みな日本語で会話している、よくある円満家庭の風景。 しかし夫が目を…

名もなき人々を蘇らせる”えいが米国昔ばなし”~『NOPE/ノープ』IMAX上映版

※ネタばれあります NOPEの意味 NOPEはNOをかなりカジュアルにした言い回し。軽めなニュアンスの時と、「ないわー」「無理」「ありえない」というような強めのスラングとして使う。反対語はYep。 今回は「無理げー」な敵そのもの、もしくはそれに対峙した時の…

現実と虚構の狭間でーアネット桜餅事件を振り返るー〜『アネット』鑑賞2回目@109シネマズ川崎(舞台挨拶回)

川崎アネット桜餅事件 『アネット』公開2日目、そして最初の土曜日ということもあり、なんとレオス・カラックス監督の舞台挨拶が川崎で。この日は監督、一日舞台挨拶巡りで、川崎の後は有楽町と池袋へ。昭和の人気アイドル並のスケジュールです。 舞台挨拶チ…

愛という名の深い森で〜『アネット』試写会@ユーロライブ渋谷(ネタバレあり)

レオス・カラックスが前作『ホーリー・モーターズ』以来9年ぶりに撮った新作『アネット』。アニエスべー主催の試写会に行ってきました。 タワーレコードのフリーペーパー"intoxicate"の抽選に当たり、本当にたまたま。公開の前日だけど、試写会ならではのイ…

アマプラ映画鑑賞『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』

アマプラで見た映画をいくつか。よかったのを主にちまちま書こうかなと。あまりネタバレしないようにします。 https://www.amazon.co.jp/dp/B07KM9BDG9/ref=nodl_ 『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』 当時の「ナンシー・ケリガン襲撃事件」を知って…

芸術のない世界など無意味〜『シェイクスピアの庭』

こんな世界になる前に、最後に映画館で見た映画。 この映画の感想を書けなかったのは、日々の生活を整えるための忙しさはもちろんだが、日が経つにつれてこの映画がしみじみ深い思いやメッセージに変わりつつあるのを実感したから。 あらすじは、最後の戯曲…

私とあなたと誰かの物語『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』

「個人的な感情を呼び起こす、とても個人的な内容の映画」 という風に思わせてしまう物語こそが、真に素晴らしいといつもドランの映画で思う。 感想や批評(これが批評と呼べるかどうかは別として)は、客観的であった方がよいのではという先入観がある。実…

「ミッドサマー」はホラーかニューウェーブか?佐藤史生作品への類似性など

・あらすじ(公式より) 〜家族を不慮の事故で失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人と共にスウェーデンの奥地で開かれる”90年に一度の祝祭”を訪れる。美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思…

ソン・ガンホにアラン・ドロンと同じ闇の眼差しを見た『パラサイト 半地下の家族』感想

アカデミー賞作品賞おめでとうございます。 まずは見て、なるほどこれは面白い。物語だけではなく、映画・映像としてできること、楽しめること、エンタテイメントを熟知し、小さくもまとまらず、かといって高い志的なものに惑わされず。楽しめました。 考察…

サイモン・ラッセル・ビールは素晴らしい『リーマン・トリロジー』@シネリーブル池袋

サイモン・ラッセル・ビールはかわいい。 そして途方もなく天才的な俳優である。 注意)↑という話しかほとんどしてません。ネタバレはあります。 私は広島東洋カープのファンなので、サイモン・ラッセル・ビールをカープの選手に例えるとするなら 「新井さん…

「愛する人」「わたしを離さないで」@早稲田松竹

夏休みは私の見たい映画が軒並み終わってることが多いのですが、早稲田松竹などリバイバル映画館はいつも絶妙なセレクトで満足させてくれます。 この二本立てはまさに私のツボ。この手のどんより映画、大好物。わざわざ金を払ってまで何故どんよりしにいくの…

「WE DON'T CARE ABOUT MUSIC ANYWAY...」@渋谷ユーロスペース

東京で新しい音楽を生み出す8人のミュージシャンと日本の大量消費社会を結びつけ、対峙させたドキュメンタリー映画。 ドキュメンタリーとはあるけれど、音楽が主役で、それを紡ぎだすアーティストは裏方であり「狂言回し」のようにも見える。映画においては…