je suis dans la vie

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『パブリック 図書館の奇跡』@横浜ジャック&ベティ

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見たのは9/29(火)。思い出し感想です。ネタバレあり。

 

アメリカのシンシナティの図書館で働くスチュアート(エミリオ・エステベス)は、毎日利用者の面倒な対応に追われている。ある時大寒波が押し寄せ、行き場のなくなったホームレス達が図書館に集まり立て篭もる…というのが大筋。

 

図書館は本を借りるだけにあらず。寒い冬には開館から閉館まで過ごすホームレスたち、ネットを利用する失業者、行き場のない人々のセーフティネットであったり、居場所であったりする。日本でも最近は新しい宮下公園(ミヤシタパークとか名前変えてなんやねん)の変貌や、災害時の避難所でのホームレスへの対応が問題になったりアメリカだけの話ではない。

 

スチュアートが「図書館に救われた」というバックグラウンドが少しずつ明かされ、物語に絡まっていくのも面白い。

最初の方で、ホームレスの常連グループがいつものように図書館のトイレで洗顔や歯磨きをしていると、スチュアートが様子を見にくる。彼らの窮乏を聞いて思わず中の1人に金を渡すが、うまくシニカルな笑いでいなされる。

ここはすごく偽善的なシーンになっており、スチュアートが浅はかなように見えるが、実はスチュアートは以前ホームレスで彼らと同じ立場だったからどうしても見過ごせないというのが徐々に明かされる。

スチュアートはホームレスだった頃に飲酒や暴力の問題を抱えていたが、図書館に通ううち本を読み勉強し、館長の助けもあり、資格を取って図書館で働くようになっていたのだ。

だから彼らに共感して、成り行きとはいえ図書館の篭城を手助けすることになる。しかしそこをよくある正義漢のヒーローに描かず、スチュアートの不器用さや葛藤こそがエミリオ・エステベスの描きたい部分なんだろうなと思うし、すごく彼らしい。主演だけどあくまで伝えたいテーマがあって、役者の自分はそのツールなんだなと。

他にもそんなシーンがあるのだが、アレック・ボールドウィン演じる刑事・ビルの息子とのくだりは難しいけど描き切った好きなシーンだ。

ビルの息子は精神疾患を抱えたホームレスで、図書館にいた。スチュアートは彼にシンパシーを感じて「俺も君と同じだったが立ち直った」的な話をし始める。この辺も痛々しい感じの演技がうまい。普通の映画ならそこで2人が心を通わせたり、父親との再会とか絡ませるんだろうけど、スチュアートは刑事の息子にドカンと一発パンチをくらいぶっ飛ばされる(文字通り吹っ飛ぶ)。その上スチュアートは刑事に「お前のやってるのは偽善だ」と説教される。

とはいえちゃんとカタルシスもあるし、スチュアートのやってるのは決して独りよがりではないシナリオにはなっている。

ほんとにあったんじゃないのって感じの話だけど、あんまりリアルに寄りすぎないようにしてるのかなというシーンも多い。女性キャラがありきたりで、あまり出てこないのは予算的なこととか設定で省くしかなかったのかなとも思う。ラブシーンがちょっとあるけど、映画なのでこういうシーンも必要だよね〜って付け足しっぽい。

リアルに寄ってドキュメント風にすると分かりにくい、予算が取りにくいとか、監督の思惑があったのか、もしくは単にそこまで考えが及ばなかったのかはたまた好みなのか、分かりませんが。もう少し踏み込んでも良いかなとも。


図書館という場所を舞台にした物語としては本当に共感しかなかった。自分も学生時代は区や学校の図書館を逃げ場としていたし、本から何かを受け取って救われたり知識となったりした事が多く、色々思い出してスチュアートの気持ちが分かる部分が多かったな〜。もちろん本を読まない人もいるし、それ以外の事で救われる人もいるだろうけど。私は運動できない期間があったので、本を読むしかなかったんだけど。

 

スチュアートの敵役的なポジションで、クリスチャン・スレーターが出てきて胸熱(その昔、『ヤングガン』という青春西部劇映画がありまして。例えるならアイドルが時代劇でてる的な)。クリスチャンもあまりスクリーンで見られなくなってて、久々に見たらエミリオと共演か〜!って嬉しすぎ。

クリスチャンは市長候補の検事役で、いけすかないキャラ。クセの強い感じがやはりハマる。最初髪の毛整えて知的な感じかと思えば、裏で悪態つく時はあの釣り上がった眉と同時にできるM字の生え際〜(分かる人に伝われ)。最後の「どうせ俺が悪役なんだろ」ってセリフがいい〜。エミリオありがとう〜。

 

  • 追記

初めてジャック&ベティ行ったけど、古き良きミニシアターって感じですごく居心地よかった〜。今は席もオンライン販売。現場の感染対策もばっちり。お客さんも静かにマナーよく楽しんでた。

上映前に近所「まめや」でコーヒーを。

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帰りは近所のパン屋さん「カメヤ」に寄って塩バターロールを買ったのですが、シンプルなのにすっごいあとひくおいしさでした!