je suis dans la vie

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「闇の子供たち」(ネタバレあり)

昨年夏の本公開にみそびれてたのだけど、近所で遅れて公開していたので見に行ってみた。
原作は未読だけど、タイの裏世界の様子をうまく映像にしてたかな、という感じ。阪本さんはその辺の見せ方はうまいといつも思う。ドキュメンタリー的でもなく、つくりものすぎない程度のドラマ感のある画面作り。
特に幼児売春の様子は衝撃的ではあるけど、不快感ギリギリの所でおさえていた。子供を映さず、大人の醜さを出して、メッセージ性も保って。
ただ、ラストに向けての伏線の張り方がどうもなーと思う。定石すぎるというか、初心者っぽい割に分かりづらいのでは。南部が実は◯◯でした、っていうのは途中で分かってしまったのだが(南部のフラッシュバックや、「子供が好きなのね」と言われてとまどうシーンや、恵子に「俺は裏切っている」と唐突に言うシーンやらから)、南部役の江口さんが爽やかすぎたのと、いろいろエピソードがあったわりにまとまりきってない感じがあって、最後の南部の秘密が生きてこない。鏡に新聞記事のコラージュっていうアイディアは絵的には面白いのだけどホラーっぽい(それに、どこかで見た事あるような感じもする)。江口さんが爽やかなイメージのままだったのは、「普通に見えても闇がある」という事を言いたかったのは分かるのだけど、そこを芯にするなら南部をメインに持ってきた人間の内面ドラマにした方がまとまりはありそう(暗くてエンタテイメントはなさそうだけど)。
あと、全体的にエピソードのつくりが甘い。ボランティアと言っていたゲーオという青年が実は裏切り者でしたー、っていうのも伏線ははっきりとは無かったけど、あんだけ情報ダダモレなことから、裏切り者がいるのはバレバレだし。日本でもタイでも、危ないネタに迫っているというのに緊張感なさ過ぎ。張り込みシーンでもバレバレなとこにいたり。銃撃戦のシーンも意味不明だし、最後に売春宿が摘発されたのも何故に???タイの警察がどんなか知らないけど、そこも描けばいいのに。
NGO職員の恵子役の宮崎あおいちゃんは、彼女にしてはイマイチかなーとも思うけど、「周りの見えていない未熟な偽善者」な感じは出ていたので、わざとちょい嫌な感じにしてたならうまいなと思う。
せっかく「見て見ぬふりですか」「世界は一人の子供も救えないのか」(恵子)と、「見て見た事を記事にする」「一人救ってもまた別の犠牲者が出る。仕組みから崩さないと」(南部&報道側)、という対立があるのだから、そこを芯に持って行って、どちらが正しいというのではなく、それぞれの決着をつければいいのではと。南部も報道記者として苦悩する形にした方が、分かりやすいのでは(ありがちではあるけど)。
阪本さんはいい時とイマイチな時の振り幅があると思うのですが、今回はどっちにも振れてない感じもする。ただ問題提起という面では、いろいろ考えさせられて面白かった。