je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

「メタルマクベス」@青山劇場

いやー、面白くてカッコよかった。かっこ悪いはかっこいい。まさにそんな芝居。
脚本はクドカンワールド満載。ちょっと下ネタが少なめだけど、青山劇場の観客が引きまくる(褒めてます)台詞。でも、ちゃんとシェイクスピアの名台詞を散りばめて、印象付け、自分の世界に取り込んでいる。しょっぱなの松岡訳と小田島訳の引用やら、「帝王切開」の使い方もサイコー。そーなのよ、マクベス読んだ・見た事ある人なら分かるだろうけど、あの帝王切開ネタはギャグだよねー。初めて見たときに、「女の股から云々」の台詞の時に、「帝王切開もあるよな。でもまさかな」と思ってたら、それだったもんで「マジ?」と思った思い出があります。絶対シェイクスピアってとんでもないアホ親父だったと思うよ。それを現代のアホのクドカンがアレンジって、実はずっぱまりなんだ。
私もクドカン同様、メタルは避けて通った道ですが(そういう人多いの何故だろう)、弟が買ってきたラウドネスを聞いて、ぶっとんだ思い出があります。メタルの人ってうまいんだ・・・。というかうまくないとできない、なんて。1986年のエピソードのメタル、パンク、バンドブーム、イカ天と懐かしい。縞々のスパッツ流行ったよなー。嗚呼、ジュンスカのTシャツとか着てたよ(純太と同じように首まわり切って)。タータンチェックのスカートはいてた。ラバーソウル欲しかったけど、サイズが無いからかわりにゴルチエのブーツ。・・・と走馬灯のように(恥ずかしい)青春時代を思い返したのです。
内野さんは、カッコよさと悪さの幅の広いランダムスター(マクベス)だったし、松さんはかわいくてぶっ飛んだ奥さん、森山君はアホで熱くて軽やかな(ダンスシーン、高く留まるジャンプは素晴らしい!)レスポールJr.(マルカム)、上條さんのレスポール王(ダンカン王)は原作そのままの荘厳さでアホな歌詞をめちゃダイナミックに歌う。ああ、もう全員あげてたらキリないけど、エクスプローラーも、レディグレコも、パール王もアホかっこいい。
そしてそして…やっぱこの人、北村有起哉くん!うう・・・なんてかっこいいんだ、破れたシャツと細いパンツに赤い髪がパンクでロックでメタルなグレコ(マクダフ)。すいません、出演シーンはずっとユッキーばっか見てしまったよ。見とれたよ。それに、いいとこ取りなんだもんよ。原作でも好きなんだよねー、マクダフ。忠義を尽くす正義の人。家族を置いて、危険を承知で追放された王子を迎えに行くシーンとか大好き。マクダフ&マルカムのシーンは本当に最高だ。ここだけはクドカンも原作と変わらず、小ネタなしの緊張感あふれるシーンにしてくれた。グレコが家族の死を悼み、復讐を誓うシーンではあちこちで鼻声が聞こえて思わず私もぐぐっときました。
でも、その後のランダムスター夫妻のシーンを知っていたのでね。私が泣いてしまったのは狂った夫婦のシーン。いつもここでぐわっと来る。だってさあ、この二人、本当にいい夫婦なんだもん。ある意味悪妻なんだけどさ、でもさ、嫁は旦那が大好きなんだよね。だから、自分が頑張ってこの人を男にしてやろうって思った。いい嫁なんだよ。んで旦那も嫁のこと負けずに大好きだから、嫁の喜ぶ顔が見たくて頑張ったんだ。ただそれだけだった。名誉も金も野望もほんとは関係なくて。「賢者の贈り物」みたいな夫婦だと思うのよ。お互いがお互いの事しか考えてなくて、好きで好きで好きで。世界に二人だけっていう(中島みゆきの歌みたいだな)。「あたしが言わなければ」って嫁は狂った旦那のために、一緒に狂っていく。幸せじゃないけど、幸せ。松さんは、可愛らしさと強さと、狂っていくまでのぶっ飛びまで、けなげで切なく表現していた。ほんとこの人は舞台に立つと集中力は凄い。別格だと思う。
しつこくユッキーですが、ベースシーンもあったし、殺陣も美しかったし。これが初めてのシェイクスピアだというけど、このアレンジ版でも基本は固く、台詞回しも相変わらず朗々と。ちょっとしゃべり方に癖があるんだけど、はっきりしてて聞きやすい。もうちょっと歌を聞きたかったわー、踊りも。でもこの人は動きのある役が本当にいい。伸びた手足、細く滑らかな線の腰と首筋。板の上での一挙手一投足が、いつもその芝居のためだけにパズルのようにバチっとはまる。でも、そこからはみ出るくらいの自由なパワー。ほんと、凄い人だ。いつかこの人のハムレットリア王を見てみたい。パックもいいかな、ロミオも愛らしいだろう。それまで、いやいつまでも応援しますよ。大好きだー!
ラストの解釈もぶっ飛んでて、最初から最後まで飽きさせませんでした。相方と初めて観劇だったのですが、けっこう笑ってたので良かった。メタルなんで、音がうるさくていやかな?と思ったけど、途中内野さんのシャウトしてるシーンでちょっとウトウトしてたくらいだから、割合リラックスして見られたよう。
カーテンコールでは、ユッキーがちょっと唇をぬぐっていたので、心配。立ち回りでぶつけたかな?他の出演者の方々も、ものすごいシーンの連続なので、楽日まで怪我なきよう。
夕食は劇場近くの宮崎料理に舌鼓。鶏も冷や汁も焼酎もおいしかった。やっぱり、焼酎は動物の名前が多いなあ。早い時間なのに混んでて、週末は予約がいるとのこと。