je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

読み返してみたり

リピート癖があるのは自覚していたが、最近とくに顕著だ。まあ、年取ったんだから当たり前だが。

戦友のようにこれ以上はない相性の夫婦のナツとカズ。相方、パートナー、永遠の恋人。同じ編集者という職業柄、よきライバルでもある二人。しかし、カズの浮気の告白により、崩れる関係、そしてナツにも新たな恋が・・・。
な〜んて、あらすじを書くとメロドラマみたいなんだけど、そこはそれ、エイミー節で 。A からZで始まる26個の単語で、恋の始まり、終わりを描く。ラップ、R&Bのようにリズミカルなことば。そしてその中から再生される、愛する人への気持ち。普通に嫉妬も、憤りも、とまどいもある。でもナツは前向きだ。後ろをぐるぐる振り返りながらも前向きで男前。カズが恋人から贈られたタイをナツに結んでもらおうとしたら、「私の手は、そんなださいタイを結ぶためにはない」と一蹴し、甘えるカズに「私、手の平で男を遊ばせておいて平気な鈍臭い女じゃないよ」なんて言っちゃう。本当に希少価値。そしてそういう人間を描く詠美姐さん、すげえcool。
ナツとカズみたいになれたらいいな、って思う。でも、一緒に綱渡りしてくれる相手なんて、なかなか見つからない。しかも、相手も自分も落ちないようになんて、自分にも相手にもそれだけの覚悟と能力が必要。愛の才能ないの〜、今も勉強中よ♪ってか。

題名だけ見ると、ラブストーリー?って思うんだけど、失恋、ってふったふられただけじゃないよん、となんとも深い中・短編集。トリッキーな部分もあって、ある種のミステリーとして読んでもいいかも。
「欲望」では、鷺沢さんの作品によく出てくる、バブルが背景。うちは親が公務員だったので、特に恩恵を受けなかったのだが、ちょうどバブル真っ盛りの頃は、近所にヤバそうなお金を持っている人が増えたりした。はじけた後は、知人の家族の離婚・離散が多かったのを思い出す。
誰かを救いたい、なんてすごくキツイことだ。自分自身よりも大事な人がいるなんて、軽々しくは口にできない。それを「欲望」と称してしまうセンスに脱帽。
「記憶」は衝撃・・・。窮鼠猫を噛むじゃないけど、復讐の仕方はいろいろあるなあ…と感心してみたり。主人公・樹子が政人に惹かれた理由も独特で、歯の矯正の話とか、ありがちではあるのだけど、ふ〜むと思う箇所もあり。
同じような質・背景の男性だと「バイバイ」のショーリを思い出すのだが、ショーリは女の選択に対してあまり目的がない。愛情に対して、受け止め体質であったというだけだ。この男は「用途」で女を選択している。その選択の明解さに、主人公も思わず「なるほどおッ」とうなってしまうのだが。その男の質を「ストイック」と言ってしまう筆者にまた脱帽。

美学、ポリシー、スタイル。必要ない人もいるだろう。でも備わってしまった人には、絶対不可欠、生活必需品(生活という言葉がこれほど似合わないこともないが)。
TO-Y」の「高い所からじゃなくても、いい景色は見えるんだぜ」に人生変えられた人も多いだろう。ヒデロウの「あんた達が食いつぶしてきた10年とあたし達が生きてく10年は違う」にも。
時とか場所とか言葉とか、そういうのはもう超えちゃってるね。
元アシスタントさんたちの、愛あふるる後書きイラストが微笑ましい。