je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

絵本工房Vol.1 『まばたきの間に・・』@三軒茶屋スタジオ・シアター・スパーク1

原作:井上真鳳(まこと)
構成:オオミチユウコ
音楽:namyan

昨年、「溺れる市民」というお芝居で、井上さんの熱演に心奪われまして、日記に記させていただきました*1。恐れ多くも先日、井上さんご本人からこちらにコメントをいただき、井上さんの演技に再会することとなりました。こういう縁てあるんですねえ。なんだかとってもうれしいです。
namyanさんの優しいギターの弦がふうわりと空気を包み、始まる。
仮面の老婆(?)がひょっこりと踊り始める。手足の長い井上さんの舞は、泳ぐようにすいすいと伸び、自分だけの空間をあっという間に作る。
暗転の後、ひとり男がうずくまっている。せまい壁に囲まれて、男はどこにいるのか分からない.煙突のようだ、登って外へ出てみる。何かが追いかけてくる。逃げる。この動作をすべてマイムで表現するのですが、露骨な表現ではなく、削ぎ落とされた最小限の美しい所作で、見やすいし分かりやすい。
そして、男は仮面の老婆によって、色々な時空へとつれていかれる。どうやら過去に経験した、恋人である女性と過ごした時間。切り取ったように、幾度も繰り返される思い出。初めてのデート、ケンカ、待ち合わせしたカフェ、卓球デート、慈しみに満ちた会話・・・。男にとって、女性がかけがえのない人だということが伝わる。
namyanさんの優しく細い歌声と、甘い歌詞が、彼の甘美な想いにきれいにリンクする。恋は美しく優しいもの。そして、人を美しく優しくするもの。井上さんの声も、張りがあって深みのある声で、力強さと優しさが同居して素敵でした。聞いていて、ふっと委ねたくなるような力があります。前回のパワフル青二才の絶叫もよかったですが、今回の落ち着きのある雰囲気も心惹かれます。
男は思い出を繰り返すうち、気がつく。自分は事故で死んでしまったのだと。仮面の老婆(おそらく死神)は、ひとつだけ願いをかなえるという(生き返ること以外)。男は悩み、最後の願いを思いつく。最後に彼女と会った時間へ戻してもらうこと・・・。
彼女の妊娠を聞かされ、動揺して逃げてしまった最後の逢瀬。彼はその時間へ戻り、彼女に喜びの言葉を伝える。そして、なによりも、彼女に出会えたことの素晴らしさを伝える。そして抱きしめ、男が最後に口にしたのは「ありがとう」、ただシンプルな一言。
近頃、私事ですが、いろいろと考えさせることが多く、今回のお芝居を見て、眼からうろこが落ちました。「あ!これか!」みたいな。いろんな出会いがあって、その出会いは自分が作ってきたものでもあるのだけど、いい出会いにするのは自分の考えひとつなんですよね。友情でも恋でも、仕事なんかの仲間意識でも、いろんなことがあってくじけたりもするんだけど、私はいろんな人に支えられてるなあ、と。それを投げ出さないで、いい形に整えてたいせつにしたい。未熟な私は、時々わーっ!ってなるんだけど、そんな時は周りの人の忍耐力につくづく感謝、そして自身を反省して成長するよう努力します。ほんとだよ、みんな、大好き。出会えてよかった。ありがとう。
そして、井上さんにはとても素敵なパワーを頂きました。目がキラキラしてて、体中からキラキラ零れ落ちて。見てて浄化される感じがするんです。うまくいえないのですが、会場の外でちょっとだけご挨拶させていただいた時も、そんなパワーを感じ、分けてもらったような気がします。ありがとうございます。またぜひその素敵な空気に触れさせてもらえたら。またお芝居、見に行かせてください。

*1:id:star-s:20041203