je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

「ロミオとジュリエット」@日生劇場(2004/12/21)

(ネタバレもありますので、御注意ください)
シェイクスピアの大恋愛劇、内容は誰でも知っているはず。それをどう藤原くんが、杏ちゃんが、そして蜷川さんが化学反応を起こすか、そこがみどころ。
まず藤原くん。やっぱうまい。そして、それなのに、この人はものすごく必死だ。これが最後の舞台、これでもう死ぬんではないか、という息の激しさ。ファンではないのだけど、彼の芝居への姿勢には圧倒され、感服する。以前に「情熱大陸」で「身毒丸」の楽屋裏を見せていたが、それは命を削るという行為そのものだった。ゾッとした。でもそんな裏を見せてもなお、彼の演技は夢であり、見る人に美しさを感じさせる。恋をして、喜びに跳ね飛び、一喜一憂し、悩み、バカやって、しかも終いには死んじゃって。アホやこいつ、なんだけど、「恋したっていいじゃな〜い!」という本気の恋に落ちた時の、誰もが一度は感じたであろうお花畑状態を熱演。藤原くんて、劇場に住んでいるんじゃないかな〜とか思ったりして。
杏ちゃんはいつみても可憐やね。この子見てると、古き良き時代の少女性を思い出す。藤原くんとの息もなかなか。「ハムレット」の時は、一緒のシーンが「尼寺へ行け!」だったので、ラブラブな二人を見るのは微笑ましくて。やっぱロミジュリは若いコがやる方がいい。この話は王子様とお姫様の話じゃなくて、初めて恋に落ちた時のなんともいえない一時的な高揚感と疾走する心の話なんだと思うの。ビジュアル的にも今回の二人はかわいくていい。でも、二人とも演技がしっかりしてるから、ただ若いだけでないし。
今回、がんばってるねえ、と思ったのはマキューシオ役の高橋洋くん。今まではなんかこう、おとなしい内省的な役者なんかな?と思ってたけど、上半身裸で、飛び跳ねまくり、なんでしょうか、何かふっきれたのか...?いろんな役をやってほしいっすね。今度は恋に溺れる青年の役などいかがでしょう。
舞台装置も圧巻。天上まである3段がまえの装置に「愛に死んでいった若者たち」のポートレイトが並ぶ。パンフには、役者さん達に「愛のために死ねるか?」という質問が。実際、死ねないんですけどね。でも、まあ、私もちったあ長く生きてるので、このバカップルの話は笑いながらも泣きます。分かる。だって、本当に好きな人がいたら、命をかけるくらいの気構えは、一瞬にせよ勘違いにせよ、誰でも感じた事あるんじゃないのかなあ。たといそれが結果、嘘になっても、裏切られて悲嘆にくれたとしても、そのくらい好きになったことがあるなら、そういう人は幸せだと思うよ。
「誓いなどいらない」と言うジュリエットは、気高く純粋。そう、そうなんだよ。本当に自分が愛し信じた人なら誓いなどいらない。人間、そんなに強くないけどさ。でも、恋人であれ、友人であれ、自分が好きになった人は信じないと。それは自分を信じる事にもつながるし。
モノトーンの衣装、舞台、そこに差し色のように、赤や緑の衣装や小道具が入る。クリスマスを意識してなんでしょうね。
世界で一番バカで美しい恋人のお話。みんなが一度は陥ってしまったであろう、恋の残骸。クリスマスに似合うかどうかは分からないけれど、ニ−ナからなかなか気のきいた贈り物。