je suis dans la vie

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「ファウストの悲劇」@シアターコクーン

事前にkai嬢に「ニーナ(蜷川さん)の乙女心が炸裂してます」との警告もといオススメを聞いていたので、ワクワクして見に行きました。
うん。確かに。
これって悲劇じゃなくて喜劇よね!ニーナ最高!御年75歳とは思えない、相変わらずの壊れっぷりよ〜!すてき〜!
ファウストの話って、手塚治虫の未完の漫画を読んで、その時に原作を読んで、それでもなんだかよく分からなかったのですが。宗教性の薄い日本人には、キリスト教的な善悪とか分かりづらいよなあ、としか思わず。でも、話の壊れっぷりは舞台に向いてるなあとか。
でも、これゲーテファウストじゃなくて、クリストファー・マーロウの戯曲なんですね。思想的な部分より、劇的な要素が大きく、もちろん蜷川さんの演出もあるけど、見ていて単純に楽しかった。
舞台演出も、「ファウスト」を上演している歌舞伎一座という設定なので、舞台下の奈落をわざと見えるようにしたり、楽屋裏が舞台の後方に透けて見えたりという、非現実と現実を同時に見せるというものなので、どっぷりその世界にはまるというより、「見世物」を見ているという軽さがあって、蜷川さん自身がこの芝居をもてあそんでいる。醜さと美しさ、この芝居のあやういおかしさなんかをデフォルメして見せている。
ファウストがいちいち悩んでて、悪魔を呼び出すのに地獄はないと否定したり、神をあざ笑うくせに救いを求めたり、矛盾しててしょーもない人です(それはゲーテファウスト読んでる時もそう思ったけどね)。野村萬斎さんじゃなかったら、きっつい役だわ。最後の長い口上も聞いてらんないかも。萬斎さんの美声と独特のリズムでないと。
しかし、この芝居のキモはメフィスト役の勝村政信さんですね!席が後ろの方だったので、最初誰だかずっと分からなかったもん。しかも坊ちゃんがりに、白い上下…。オードリーの春日かと思いました…(勝村萌えの皆さますいません…)。いやもう振り切れてます。萬斎さんがあやうくかすむとこだったわ〜。振り切れすぎだろう。勝村さんって、堅実な演技をする人っていうイメージだったのですが、実はこんな隠し剣があったのね。印象変わりましたわ(いい意味で!)。あのタンゴのシーンだけでおなかいっぱいですう。
今回、萬斎さん、白井晃さん、長塚圭史くんが出るというのでキャスティングだけでチケット取ったの。ニーナの演出っていうのも後でそういえばと気付いたくらいだし。なんでこの3人かっていうと、3人とも美声なの。白井さん&長塚君はナレーションなどでその才能を発揮してますな。萬斎さんはいわずもがな。舞台演出の美しさもですが、聞いてて心地よい。蜷川さんがそこを考えていたかどうかわからないけど、声フェチな私にはたまらなかったです。
あとこの3人、自分自身も演出をするんだよね〜。そういう人をわざわざキャスティングするのも、ニーナならではですな。「シアターガイド」で、蜷川&萬斎&長塚で鼎談してたのを読んだのだけど、蜷川さんは苦笑してたけど、長塚君は楽しそうだったな〜。自分で演出する時より、出る方が気楽なんだろうね。やってる時も阿佐スパの時とは違って生き生きと、アドリブしまくりだったし。長塚君の出番は少なかったのでちょっと残念ですが。
今回見た舞台が重い話ばっかりだったので、すっきり楽しく見れたので(濃い舞台ではありましたが)、ちょうどいい感じ。