ひさびさの舞台鑑賞&ゆっきー☆
ネタバレですが、しょっぱなから雨ざっぱーん。事前に知ってはいたのですが、うえー、すごい水の量。中嶋朋子さんの絶叫が雨の音に負けじと響く。続いて現れるコロスの面々。ビニール傘の骨の先端にに鈴がついていて(セロテープで張ってあるのがなんとも)、ちりちりとまた不思議な音響。生のドラムとパーカッションがさらに素晴らしい音響効果。そのせいで台詞が聞き取りにくいかなあ、と思っていたのだけど、いつになく絶叫芝居で、聞き取るために集中するというより、役者人のテンションの高さに常についていくのが大変。2時間半ほどの上演時間なのに、長く感じていたのはそのせいかも。
それにしても、蜷川さんお得意のシェイクスピアに似た家族の愛憎劇ですが、シェイクスピアほどの余裕がない。悲劇なんだけど、あまりにすごすぎて、哀しいとか可哀想とか思う暇もなく。
本来は、オレステスの母親が父親を殺す計画を立てるあたりからの話の方が分かりやすいのだろうけど、これはあくまでオレステスの物語。母を殺し、その罪深さに狂い、悩む青年。こういうのやらせると藤原君はほんとうまいわー。ファンじゃないけど、ハムレットにしろ、ロミオにしろ、あの顔をゆがめて視線の定まらぬ泣き言ばかり言ってる役を、ここまで愛らしく見せる人はいないよう。本来は悪女のエレクトラが、アホな弟に翻弄されまくってて、メインをどこにおくかで芝居がここまで変わるとは。
エレクトラをメインに置けば、それは女の物語として感情的に見せやすい部分もあるのですが、今回は政治、国、社会、宗教といった形のない、しかし大きいものを含んだものとして見てもいいかも。途中のオレステスが「ママを殺した僕を罰するなら、夫殺しの女が許されることになるじゃん!それは国家の損失じゃん!だから僕は正しいんだー!(台詞は意訳)」って弁明するとことか、なんかどこぞの政治家より説得力あったもん。藤原君が立候補したらすげえよなー、とふと思ってみたり。
それにしても、往生際の悪い男なんで、つっこみどころ満載でした。「だってアポロンに言われたから!僕は悪くないよね!」と終始自己弁護しまくって、エレクトラに甘えて、うえーん、ていう話なんじゃないかと。いやいや、いかんいかん、と途中からは、オレステス&エレクトラ、オレステス&ピュラデスの愛情劇と考えを切り替えました。
そういう風に見ると、オレステスがエレクトラとピュラデスの間をふーらふーらしてる色男みたいで面白いのだな。ピュラデスには「君が死ぬなら僕も!」と言わせ、エレクトラには「一緒に死にたい!」と言われ、モテモテですねえ。
ゆっきーは今回おひげを生やして長髪で、ちょっと低めの声で。こんな抑え目の演技が大人だわ・・・と今までにない、ドキドキ感がありました。なんていうんですか、かわいかった学生時代の後輩が社会人になってスーツ着てたときの感じ?ボロボロのオレステスを優しく抱き支えるとこんなんてもう・・・ええ、藤原君がうらやましかったですよ!「君の看病ができてうれしい」なんて言われてさー。あたしも看病してよう(違う)。
またオレステスが、エレクトラにしたのとは違う様に、その支える腕に指を這わす。エレクトラの時は、くびれた腰や、盛り上がった胸や尻に強弱つけて「触れる」のに、ピュラデスにはその「力」に対して「沿う」感じ。うーん、役者って、理屈じゃなくて、体で反応してそれを見せられるかどうかなんだなー、と羨ましく思いつつも感心したりして。
それにしても、オチがありゃーだったのですが、降ってきたビラに書かれた、現在紛争のある国の国歌を見て、納得してしまったり。蜷川さんのメッセージはストレートで分かりやすい。それをあえてやるとこがまた凄いかも。
そうそう、コロスの使い方は相変わらずうまい。最後のカーテンコールで、出演者これだけだったんだ、と思ったのは、コロスの存在が広がりを見せていたからだと気付く。以前に母が知人の劇団の手伝いで、このギリシャ悲劇のコロスをやったのですが、その時は人数も多かったのに、同じ、いやそれ以上の存在感と密度があった。蜷川さんってすごいんだー、と当たり前のことを思ってみたりして。