je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

Syrup16g presents “UP TO THE WORLD #2”@SHIBUYA-AX(二日目)

案の定、ライトは青基調。今日はアルバム「静脈」のイメージ。
1曲目「Reborn」というのは、なかなか度胸がいるんじゃないかと思う。しかし、その後「翌日」、「I・N・M」へのつながりは良かった。あまりジトっとならず、昨日のトップの爆発に比べてサラリと流す。迷いがない。新曲がない分、緊張感が減るところを、じっくり聞かせつつも待たせないやり方は、このバンドが成長したということかもしれない。曲順、というのもあるけれど、バンドの音も成長している。
「生活」でのキタダさんのベースが良く聞こえて、リズム体は昨日よりバランスがよくなっている。ドラムも低い音がクリア。その分、ギターがサポートのばかり聞こえて、五十嵐の音はイントロのリフなどしか聞こえない。ギターソロはなかなか迫力があったけれど、シロップの音でないように感じた面もあった。ただ、「My Song」はこのパターンで聞いて良かった。弾き語りもいいのだが、厚くなればなるほど、この曲の奥深さを感じる。
「月になって」「ex.人間」も久々に聞いて満足。大樹ちゃんのコーラスも安定していていい感じ。
昨日も思ったが、穏やかな曲と、ネガティブな曲の振り幅が広い分、それらを混ぜた時のライブのバランスは難しい。だが、意外と両極な曲をつなげても不自然さはなく、むしろ飽かせない魅力を再認識できた。この日は「明日を落としても」から「Your eyes closed」へのつながりは、一見不思議なようだったが、詞の内容より、五十嵐のソングライティングの素晴らしさが感じられる。
ベストを出すという事を知った時、アルバムごとにコンセプトを違えてきたこのバンドが、それらすべてイメージが違う曲たちをどのように並べるのか、それが一番興味があった。今回、二日間をアルバムごとのイメージでステージングしたことで、シロップの新たな面が開けたのではないかと思う。新曲だけのライブ、立て続けのリリース、予定調和にならないようにしてきたことが、むしろ予定調和になりかけてしまいそうな時、あえて古い曲を洗いなおすという作業。完成されたものを、別の形で提示するという事は、もしかしたら苦しい面もあるかもしれない。以前は古い曲をやるのは面白くない、というような発言もあったように、常に前へ前へ進み続けてきた。そのバンドがわざわざベストを出す。ファンサービスでも、間つなぎでもあるわけがない。アルバムを持っているからベストは買わない、という人もいるかもしれないが、むしろそういう人にこそライブを見て欲しい、ベストを聞いて欲しいように思った。
私はいつも、五十嵐が何を思っているのか知りたい。そう願ってきた、けれど、できるわけもなく、微かな敗北感でライブやCDを聴いてきた。今回のライブは、いくらか近づけた、というのはおこがましいかもしれないが、勝手な親近感ではなく、五十嵐の音に対する姿勢がはっきりと分かりやすい形でみえた。詞にしても、音にしても、このバンドはいつも「分かりやすさ」を持っていたではないか。いまさらながらに気付いた二日間だった。
割と落ち着いて見ていたけれど、不覚にも「おまけ」の五十嵐の弾き語りで泣いてしまった。大粒の涙、っていうやつを久々に落とした。「本当は親父が来るはずだったんだけど、来れなくなった」という五十嵐が、その父親のために一晩で書き上げたという新曲。かなり不恰好で、プライベートな内容のその詞は、ライブ全体とは別に、ちょっとぐっときてしまった。私も年だなあ。