highline records 10th anniversaryと銘打ったワンマン、そして、あの10.10以来の野音。
どうしたって思い出さずにはいられない。あの混沌の中であった最高のライブ、最高のエンディング。またこの場所に来られてうれしいとも思い、あのライブを超えられるのかと心配し、そしてまだ五十嵐は殺伐とした景色の中にいるのか、と疑いながら期待しながら。
会場に入るとなんと立ち見が多かった。当日券も300枚くらい出ていたみたいだ。野音はびっしり人で埋め尽くされた。前回の野音の時はここまでじゃなかった。3年近く音源を出してないバンド。ライブも年に数本しかしないバンド。なのになのに、何故?
観客はいろいろなタイプの人がいた。日曜日で野音だからか、若い子だけじゃなくて社会人ぽい人も多かったし、男性もかなりいた。雰囲気は明るい。もう飲んでる人がいたのか、公園内のドイツフェアのせいか、ビールの匂いが風にまぎれている。
天気は薄曇だが、上々。スタートは17:30予定だったが、10分ちょいほど遅れた。金髪野郎が弾けるように出てきて、他のメンバーも淡々と。前回のライブでもやった新曲から始まる。前は新曲は、インプロヴィゼーション的な要素が強く、観客おいてけぼりな感じで二度とやらない曲もあったりしたが、最近は完成度も安定度も高く、「ただ音源化されていないだけの曲」でしかない。
落ち着いて見ていた。いつもと同じ心持ちだった。でも、「I.N.M」で久しぶりにぞわっとした。全身の毛穴が開く感じ。「翌日」のイントロで、一気に持ち上がった。
五十嵐とサポートギターの青木さんの間に火花が散って、ガチッとはまる音さえしそうだった。この日のコントロールは誰でもなかったように思う。いつもは、五十嵐か中畑が走って、それをキタダさんがうまくグルーヴにする。落ちそうな五十嵐を中畑が拾い上げる時もあった。それがシロップだった。でも、違った。そういう時、私はキタダさんを見て、その日のリズムを見極めようとした。この日は、何もしなくて、自分は音に重なることができた。青木さんのリフが浮いてるように感じた時もあったけれど、ほんとに少しで、かなりの割合で五十嵐の音にからまっていたように思う。
「シーツ」も「正常」もその曲が持つネガティブなイメージと逆に、演奏は前に上に行っていたと思う。「My Song」や「パープルムカデ」という名曲と並ぶくらいに。
あっという間のアンコールもまた最高で、「天才」、「ソドシラソ」、「落堕」の流れはことに気持ちよかった。天才での中畑のドラムが、ただパワーだけじゃないリズムになっていて、もしかしたらこいつジャズもいけるかもしれん、とさえ感じた。
二度目のアンコールの頭は新曲。前回のツアーでもやった、かなりポップなノリ。「おーいえぇ〜」ってサビ。珍しいのじゃないかな?そういえば、五十嵐が「べいべー」って歌う日は来るのか、来ないだろうな。
最後のアンコールは「Reborn」。
「野音のラストは決まってますから」
泣きそうになった。でも泣かなかった。そして、もう2004年10月10日の自分を、哀れんだりしていない事に気づく。時は流れるだけじゃない。その中でいろんな事があって、幸せだったり、不幸だったり、立ち止まって行き場がなかったり。でもいつの間にかどこかへたどり着いている。そう信じられる。
シロップも、その周りの人たちも、そしてファンもそうであればと願う。
終わった後の空気は、いつになく穏やかで皆満ち足りていた。ジョン・レノンの”Mother”のイントロの鐘の音が終わりの合図になった。ジョンの歌声が響いた時、どこからともなく拍手が起きて、シロップへの感謝と賞賛が野音の空へ上っていった。
次のライブは9月24日。UP TO THE WORLD 企画のファイナル。
(今回、友人が急遽行けなくなり、チケットを引き受けてくださったハルさん、ありがとうございます。助かりました!シロップのファンが少しでも多く、あのライブを見られてよかったです)
set list
- 新曲
- イエロウ
- 神のカルマ
- 新曲
- I.N.M
- 不眠症
- Sonic Discorder
- 明日を落としても
- シーツ
- My Song
- ex.人間
- 正常
- パープルムカデ
- 翌日
- Your Eyes Closed
[En-1]
- もったいない
- 天才
- ソドシラソ
- 落堕
- 汚れたいだけ
[En-2]
- 新曲
- 空をなくす
- 真空
[En-3]
- Reborn