je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

シンポジウム「ゴンブロヴィッチ−その普遍性と同時代性」@シアターχ(2004/11/28)

ポーランドの前衛作家であり、30代半ばでアルゼンチンに亡命し生涯を終えた、ヴィトルド・ゴンブロヴィッチが生誕100年ということで開催された企画。...読んだ事ありません...。で、なんで参加したかっていったら、同日の夜に公演のあった「溺れる市民〜東京のフェルディドゥルケ」が、愛しの島田雅彦様の原作だったので〜。作品の方はゴンブロヴィッチの「フェルディドゥルケ」へのオマージュ...なんですかね。ということは!シンポジウムに島田さんも参加されるわけで。
要はミーハー根性バリバリで見に行ったの。なので、純粋な文学青年は読まない方がいいですよう。当方、一応かつては文学少女だったものですが...。
パネリストは、左から西成彦さん(立命館大学大学院教授)、島田雅彦さん、作家の佐川光晴さん、久野量一さん(ラテンアメリカ文学研究者)、司会の関口時正さん(東京外国語大学教授)。
3時間みっちりやったので、読んでいないのにゴンブロヴィッチ通になった気持ち。それぞれ、ゴンブロさんへの思い入れが違って、西さんはゴンブロヴィッチについて丁寧に説明。もしアルゼンチンでなく、日本に来ていたらどうだったとか、友人のように語る。佐川さんは、ゴンブロヴィッチの「他者と向き合う姿勢」について中心に、その精神性に惹かれているとのこと。「本当の自分を誰も知らないと言いながら、確固たる自己もない」、「そのくせ、人の視線に敏感で、他人の観念に引きずられる事に耐える」など。久野さんは、ラテン文学という観点から、ボルヘスとの比較や、ピニェ−ラとの交流などゴンブロヴィッチの歴史を。そして、ラテンアメリカの「未成熟道」、「硬直したものから自由になろうとする」という精神との共通性。久山さんは、哲学者としてのゴンブロヴィッチ、文学の話...とそれぞれ思い入れが違い、言葉を扱う方々の技を見た思い。
で、島田様なわけですが、やっぱ...かっこいいわ...。グレーのツイードジャケットは襟の折り返しが革?で、中の白シャツはノーカラー。パンツは白っぽいウオッシュジーンズ?だったかな。んで、黒い靴(ブーツ?)そして〜、ヒゲヒゲヒゲ!最近めっぽうヒゲ好きな私を悩殺ですか!...話がお空の向こうに行かないうちに、島田さんトークをピックアップ。<島田さんのゴンブロヴィッチ>

  • 上海で自分の作品が出版されるというので、行っていた時、中国の編集者に「中国で一番人気があるのは、ムラカミハルキとワタナベジュンイチだ」と言われ、「あんなものはジャンクだ!と言ってやりましたよ!」とのこと。(その日、「翻訳夜話」持ってたんですが、隠しました...。)
  • 「日本で影響を受けたのは谷崎、世界ならゴンブロヴィッチ
  • 「谷崎とゴンブロヴィッチは似てる。スケベで変態。外国人に憧れるところ。年取っても青春してる。」
  • キリスト教を中心とした欧州文学へのあてこすり。自分の所属している社会への皮肉。面従腹背。」
  • ゴンブロヴィッチは、350年くらい遅れて、ユダヤ人のように南米へ移住した」
  • ゴンブロヴィッチは『二度目の思春期』。30過ぎてからの迷い、旅、天国と地獄。それは、子供の運動会ではりきって、転んでしまう父親。純愛できなくて、女の尻をおっかける。手鏡を使ったノゾキ。」
  • 「20代に読んだ時は、『青二才に開き直った者の強さ』」
  • 「40代を過ぎて読んだ時は、『退廃に傾いてる』。若造のための文学ではなく、中年のための作品だ」

<ディスカッションにて>

  • 「アルゼンチンの若い女性作家と話した。ボルヘスは避けて、ゴンブロヴィッチの話をしたら盛り上がった。」その後、ラテンアメリカ文学に触れ、久野さんと顔を見合わせ頷きあう(久野さんの話の時に、島田さんは少しおねむだったようで、佐野さんがハラハラしてたんだけど)。
  • 「日本以外、ドイツやフランスなどでのゴンブロヴィッチの需要は?」という島田さんの質問に、西さんが「ゴンブロヴィッチスペイン語で書くのは、小泉八雲のようなもの。不自然でない。」という言葉にいたく納得していた模様。
  • 佐野さんが「ゴンブロヴィッチのように青二才を掲げてるが、葛藤はないか」と話を向けると、「なんでそんな話しないといけないのか」と、場内爆笑。「僕は大人ですよ。対人関係とか忍耐強いし!子供っぽいのはカネ持ってる奴。ITバブルとか。僕は球団は買えないけど(買いたいのか?)読売、西武のじじいとか、年とってすねる奴も子供。」と力説。でもその時点で子供っぽいんですけど〜!残念!
  • 「ブッシュは知能低い。でもその青臭さ、田舎臭さが結局魅力になってしまっている。あれは戦略。」
  • 「意図的子供っぽさと、ゴンブロヴィッチの戦略的青二才は違う。」
  • ゴンブロヴィッチは自己吟味、自己批評がある」
  • Born Again/アル中/神の声/自分で考えない/稚拙/退廃/精神年令低い
  • 国のために死ねる人間がリストカット/まともに教育を受けているが故の逆説

これ以外にも、他の先生方の熱弁がすごく、面白かった。翻訳についての話なんかも。島田さんも最後の方は疲れていた様子。
島田さんの事は、10代の頃に文芸誌の写真で一目惚れし、それ以来ファン。作品はだいたい読んでる。10年くらい前の、立教大での講演では、婦女子のファンがすごかったなあ。みんなヒラヒラの服で可愛らしかったのに、私だけ「なんちゃってヤマダエイミ」みたいで浮いてた頃が懐かしい。久々なので、最前でかぶりつきで見ました(踊子さんには触りません)が、島田さんが時々ちらちらっと客席を見るんで、じっと見れなかった...しまった。また機会があれば、会いにいきます〜。それまでヒゲでいてほしい〜。今回のヒットはヒゲ!
同日夜に「溺れる市民」の公演も見ましたが、それは次回に。