je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

いろいろ読んだもの・文学系編(その1)

宗教が往く〈上〉 (文春文庫)

宗教が往く〈上〉 (文春文庫)

宗教が往く〈下〉 (文春文庫)

宗教が往く〈下〉 (文春文庫)

いきなり松尾ちゃんです。文学系でいいのか。いやいや、芥川賞候補作家(しかも2回)ですからなあ。島田雅彦先生(ラヴ☆)が選考委員となりましたので、ぜひ次回は松尾ちゃんに獲らせてくれい。某ボケ都知事に阻止されそうだけど。
のっけから、筒井康隆御大を思い出させる文体だったので、webでインタビューみたら、やはし意識して書いたんだなーと。ただ筒井っぽいっても、七瀬シリーズとか時かけとかじゃなくて、「九月の渇き」とか「農協月へ行く」とかあっちの方。そーいや、「九月の渇き」を読んだ時は軽くトラウマになったものですが、松尾ちゃん読んで笑えるようになったということは私も大人になったなーと。
そんなエログロナンセンス満載で、いやはや私は楽しく読んだのですが(ほんとにそれもどうかと思う)、一般の方々はどう思われるのか…。私が心配してどうする。それだけに、人にはすすめにくい作品。
エンターテイメント色が強いながらも、構成はかなりきっちりしてるかなと。長期連載だったので、息切れもあったでしょうが、その息切れも含めて計算してるんではないかと。
フクスケの一生が、かなり作者自身を投影している、しかし「神の目線」になった達観もあり、読者にある程度の理解は要求されるがおいてけぼりにはしない。展開の早さに忘れがちな部分ではあるけれど、この「視点」こそ読んでいる側と作家の唯一のリンク地点である。この辺は劇作家・演出家ならではだなあ、と。
作家自身の実際の恋愛(しかしこれもフィクションであると思われ)を作品とリンクさせ、大人計画の役者をモデルにしたキャラが出てきたり、その辺の遊びの部分も、遊びに終わらず媚もなく徹底して描くパワー。
個人的には、ミツコのキャラが好き。モデルがいそうな気もするんだが、どうなのかなー。

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

初めて読んだのは、高校生の時だったか。めちゃくちゃ流行ってて、友達に借りたんだった。しかし、まったくさっぱり意味が分からなかった。なんでこんなに人が死ぬのか、とか学生運動って何?そもそも恋愛って、セックスって何?みたいなウブな頃でしたからねえ。直子が悩んでる意味がほんとに分からなかった。
(でも、意外につまらないことは覚えていて、主人公が「車輪の下」や「華麗なるギャッツビー」読んでたくだりとかは覚えてた。あと、キズキの自殺の仕方とか。)
しかし、今は多少理解でき、読んで腑に落ちる。というのはやはり年齢のせいなのか。
ところで、このブログで何度も書いてますが、村上春樹はそんなに好きではありません。かといって嫌いというほどでもない。その割に読んでるのは、好きな作品もたまにあるから。これはといえば、むー、半々かなー。文章の完成度としてはこれより後の作品の方がやはりブラッシュアップされているし。ただ、これが村上作品の中でも大きな評価を得ているのは、なんとなく分かる。おそらくは、作者がその年齢にしか書けないものがこれなのだと思う。自身が一番傷つきやすく感じやすかったであろう年代を、その時よりも鮮明に記すことができたのでは、と。
冷静に思えば、主人公の若い男性にありがちな身勝手な行動は、あまり共感できるものではないのだけど、村上作品の主人公の中で一番ある種人間的だなと思うし。男性はこの作品好きだろうなー。
映画化するというので、なんだかなーと思ってましたが、監督がトラン・アン・ユンですかー。それなら見てもいいかも。あの人の映画は映像がほんと美しいからねー。
そういや、高校生の頃は村上は村上でも龍派が多く、皆そっちばっか読んでたなー。春樹読んでた子なんて少なかった。私はといえば男性作家は顔で選ぶという、度しがたき面食いの女子高生だったので、下敷きに島田雅彦の切り抜きを入れていました。ほほほ。まあ、大人になったので、面食いもほどほどになり、春樹も読めるようになった…というわけではないです(多分)。

神様のボート (新潮文庫)

神様のボート (新潮文庫)

江國さん作品を読むと、軽くぐったりします。明るい時に読むと、太陽の明るさがけだるさ通り越してもやもや〜っと重く感じたりして。なので、なるべく夜に読むようにしてるんですが、それはそれで怖い。
以前、江國さんの作品を映画化した「スイートリトルライズ」を見た後に、江國さんを読んだことない友人が「これってある種ホラーだよね」と言った時に、そっかー!ホラーだったんだー!とやけに納得しました。それ以降、読むときはホラーのつもりで読んでると若干もやもや感が減ったという。
それはそれとして。
娘とともに、東京以外の土地を引っ越ししまくる女性の話(というと身も蓋もない)。ひとつの地にとどまらない。馴染んでしまいたくないから。馴染んでしまったら、愛する人(娘の父親)に再会できないから。気がする、ではなく、会えなくなるというほぼ確信のもとに彼女は放浪し続ける。
母親視点と、娘視点で描かれる。話の展開自体に大きな事件はないが、彼女たちの心の変化やズレがじわじわと進行し、こちらに浸食してくる。この浸食加減がホラーたる所以なんだけど。
江國さんはとにかく文章がうまいし、淡々とした内容であっても飽きさせない。じんこと書いた「冷静と情熱のあいだ」なんて、じんこの話の方が展開があったので一見読みやすいようだけど、圧倒的に江國さんの文章力の方が凄くて、なんで共作したのか分からなかったもんなー。江國さん、じんこに文章の書き方教えてあげればいいのにー、といつも思う。
なんであの二人仲いいのか不思議。まさか、じんこを引き立て役に…?!

  • 読んだ本がたまっているので、その2へ続く(多分)。