- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/11/28
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ただ、この人、たくさん本を読んでるんだろうなあ、という文章である点はとても好感を持っている。たぶん小さいころから、文学作品はもちろん、ジャンルや形式にとらわれず、文字のあるものを好むタイプだったんだろう。CD(昔はレコード)買ったら、歌詞カードや評をくまなく読むタイプ。飛ばし読みはしても、最終的には本や雑誌の端から端まで読んでたのではないか。
と思うのは、某ミュージシャン的芥川賞作家じんこ(仮名)の小説とか読んでると、もう「日本語なのか、これわ」と読んでてつらくなる。じんこをあまり知らない友人が、映画化されたやつの原作を読んで「なんでこんな変な文章なの!」と聞いてきたので、「それはじんこだから」としか答えられなかったですよ。じんこに限らず、「いやいやそもそも日本語ちゃんとしてから文字を書いていこうか、きみ」と言いたくなる物書きさんは少なくない。本を書いてる人が本を読んでない。読者をバカにしてるとしか思えない。読んだら分かるっつうの。自分のカタルシスをダダ漏れさせて悦に入るのはいいのだが、それに他人(読者)を巻き込むほどの基本すらなってない段階なんだから。(と誰かじんこに教えてやってくれ。ミ●りん)。
閑話休題。なので、伊坂さんの文は「きちんと相手に届ける」という意志が感じられる。まさに、この表題作「フィッシュストーリー」の中での「届けよ、誰かに。」というセリフ、表現者としてものすごく正しいセリフだ。
ただ、伊坂さんのセリフはあざとすぎはしないのだけど、詩的でかっこよすぎてついていけない。そこが苦手。これは私の趣味の問題なので、悪いわけではない。でも時々、これいいねえというセリフがあって、それは本筋とは関係ないセリフだったりする。表題作では、老婦人が「凄いよね。一人の男と50年って、修行か刑罰だよ、まるで」というセリフがズキュンときた。多分、筆者は近い人からこのセリフを聞いたことがあるんだろうなと思う。小説はすべてがfish story(ほら話)で、リアリティなんざなくても確立するが、自己のリアルが確立していなければ何も出てこない。そしてじんこのような作家に限って「作品のリアリティが!」とか言うような気がする。
表題作以外の作品も面白かった中篇集。この人の作品は中篇の方がじんわりクるな。
- 出版社/メーカー: ショウゲート
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おーもりくんが出てるので見たんですが。この監督って、ほんとうまく伊坂ワールドを料理するなあ。作品の持つ雰囲気をそのまま映像に乗せている。
原作がわりと短いのでどういう風にするのかな?と思ったら、上手にふくらましてた。エピソードが4つあるので、それをどうやってつなげるのかな〜と思ったら、その見せ方もうまかったし。
おーもりくんはやっぱ「ちょっと情けない音楽好きなサラリーマン」なスーツ姿がはまってましたわ。そして、缶ビール飲む時に、目がカッと見開いてるのがツボでした。情けないへにゃへにゃ笑いも。最近はかっこいい役が多いんだけど、この路線も外さないでほしーわ。
あんまりネタバレしたくないけど、森山君がかっこよかった〜!原作でもかっこいい役なので、誰がやるのかな〜と気になっていた。原作だとガタイのいい男なんだが、森山君の細いながらも精悍な体つき、ダンスをやっているが故のしなやかで素早い動きははまり役。
あと、高良君も良かったな〜。「ハゲタカ」映画の時は、気弱そうな雰囲気で、顔は綺麗だけどあんま演技の幅は広くないのかな〜、と思ってたんだが、ここでは売れないパンクバンドの飄々としたでも熱いボーカルを生々しく演じてた。「ハゲタカ」の時は「気弱そう」なのは役作りだったのね!「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」でもいい演技でしたが、顔がいいだけじゃないんだわ。すいません。