je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

北陸旅行記2日目(泉鏡花記念館)

私からのリクエストで泉鏡花記念館へ。

幻想文学として名高い文豪・泉鏡花。金沢の町が、あの妖しくも美しい世界を作ったのだなあ。
鏡花の生い立ちをまずゆっくりたどる。母親の存在が色濃いよう。作品に表れる、女性への潔癖なほどの賛美は母への愛情が基盤か。作品には、初恋の人や、関わった女性をたびたびモデルにしています。恋愛に対しては、奔放ではないとしても、当時としては自由な精神を持っていたよう。むしろ、男性的な征服欲ではなく、存在の美としての女性、精神性を尊んでいたのでは。あまり生々しい性ではなく、妖精のような色香を持った女性像が作品に多いのはそういうことなのかも。
初版本や、装丁が展示されており、その作品の美しさや、物語性の高い世界が形で分かります。ゆかりの品々も、鏡花の趣味のよさが分かる着物や生活用品。決して華美ではなく、洗練されたものたち。ウサギの置物を集めていたそうですが、自分の干支から7つめの干支が縁起がよいということからだそうです。お土産コーナーで、ウサギの模様のブックカバーを友人と自分用に購入しました。
ロビーでは、映像が流されていて、永島敏行さんの朗読や玉三郎さんの鏡花を語る様子なども楽しめます。関連本も置いてあり、泉鏡花賞のムック本がありました。もともと、泉鏡花は好きなのですが、ここに来ようと思った一番の理由は、大好きな鷺沢萠さん、島田雅彦さんが泉鏡花賞を取った事があるということからでした。二人とも芥川賞を何度も取り逃し(島田さんにいたっては、最多6回で今後候補にあがることはないという)、実力人気とも、日本に誇るべき素晴らしい作家であったのに、賞から縁遠かったのです。しかし、その二人が取ったのが泉鏡花賞。鷺沢さんは「駆ける少年」で、島田さんは「彼岸先生」でともに20回目の受賞でした。ムック本には受賞者の寄稿があり、ソバージュヘアの若き鷺沢さんのポートレイトを見たときは、思わすじわっと涙が。エッセイ集にも載っている、授賞式のために金沢であわててパンプスを買った顛末がありました。鷺沢さんのお母様がいたく喜んだ事、その後に賞金で買ったスポーツカーに「キョーカくん」と名づけた事など、エッセイに何度か出てきたエピソードを思い出します。島田さんは金沢の町での食道楽を書いていたかな。決して賞を取ることが作家が素晴らしい証明にはならないし、作品の良し悪しがきまるわけではないけれど、やはりそれでも何かしら意味のあることではなかったかしら、と思うのです。
私にとっては、ちょっとだけ縁のある(と思っている)泉鏡花サマ。心の中で「鷺沢さんと島田さんに賞をくれてありがとうございます」とお礼を言いました。