je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

「やわらかい生活」(トークショー付)@渋谷シネアミューズ

わーい、久々のなおたんだーい!と仕事が終わるとダッシュで渋谷へ。
平日のわりあい早めの時間ということもあってか、6時過ぎに映画館へついたのに、整理券は50番台。女子率高かったですが、映画好きな感じの年配の方や業界っぽい方々もちらほら。
トークショー廣木隆一監督と大森南朋さん。大森さんはベージュのキャスケットに、黒の大きめTシャツにジーンズ。Tシャツには白ぬきででかでかとハイロウズマーシーの姿が。(後で「そのTシャツはどこで買ったんですか?」という質問に、「友達が原宿のレコード屋やってるんだけど、マーシーの許可を得て作ったもの。でもマーシーの事務所の許可は得てなかったので今はありません」だとか)
トークはゆるーい感じでスタート。大森さんは「そもそも何で僕は今日呼ばれたんでしょう」としきりに言ってました。あまり出演シーンがなく、この時も1日で撮影は済んでしまったとのこと。
大森さんの発言集いろいろ。(記憶で起こしてますので、あやふやですが)

    • (作品について)

「変なカツラをかぶせられて、たくさん写真撮ったのに、ぜんぜん使ってくれてない」
「寺島さんは年下ですけど、大先輩な感じ」(出演者と年が近い、仲がよいという話で)
「役作りしましたよ。この時は太りました!嘘です、暴飲暴食してたころで・・・」
映画上映前なので、作品内容にはあまり触れられないようでした。

    • (お二人のなれそめ、初めて組んだ『天使に見捨てられた夜』について)

「出演シーンわりとあったのに、ばっさり切られた。本当は冒頭に長い出演シーンがあったはず」
「この作品で、いろんな人と会った。田中要二くんとか」

「役のために痩せていったのに、『役作りそれだけ?』といわれた」
「地方ロケでみんなが美味しいもの食べてるとき、(体型維持のため)自分だけ食べられなかった」
「演出の仕方が分かりづらかった!『飲み屋にいるときみたいに運転して』とか言われても」
「海外の映画祭に監督と二人で行って、男二人で買い物とかしてた。『これ似合う?』なんて言って」
と、監督の無茶に対しての愚痴が多かったですが、なんだかんだ仲良しで気を許してる同士という雰囲気で微笑ましい。なので、内容もあるようなないような。以前より大森くんはトークがうまくなったような気がします。笑顔もいっぱい見せてくれたし。あ、やっぱラヴいからですか〜?ニヤニヤ。

  • 【本編】

キャリア街道を突き進んできた優子(寺島しのぶ)だが、両親と親友の突然の死をきっかけに、うつ状態へ落ち込む。趣味のいい痴漢(田口トモロヲ)に出会い、東京の端っこ・蒲田に越してきたことで、うつ病のやくざ(妻夫木聡)、元同級生でEDの議員(松岡俊介)、そしていとこ祥一(豊川悦司)が優子の周りに集まってくる。彼らとの関わりの中で、少しずつ優子の固くなっていた心がほぐれていく…
監督:廣木隆一
原作:絲山秋子
脚本:荒井晴彦

ヴァイブレータ」に続くビョーキ女シリーズ第二弾(らしい)。監督、脚本、主演女優、スタッフもヴァイブレータとほぼ同じ。
なんちゅーか、アイタタな身に覚えがあるようなないような映画。ただ、イタイのだけど、主人公の優子が、病気だけど達観してて飄々としているので、見ていて過剰な共感もしないし、同情もしない。ヤクザとうつ病同士で薬の話で病気自慢とか、笑えた。病気とうまく付き合う段階まで行っているせいかも(というか長い付き合いに結果なってしまったのだろうけど)。「心の捻挫みたいなもん」「自分が死にたいと思うのが一番怖い」「あたしみたいな安いすき間家具」とか、自分で自分を痛めつける台詞をひょっと吐いたりして、それはそれでドキッとするけれど。でも、優子は自分のやり方で、生活に折り合いをつけている。だから見ていて、ギリギリするような切迫感はない。
相変わらず、寺島さんはうまい。うつになってクリニックに電話かけるとことか、動けなくなって顔をぎゅうっとしかめてるとことか。自分の前に勤めていたとこの上司がうつだったのだが、まさに同じ状態、同じ目、同じ声音だったので、ひゃあっと思った。寺島さんが撮影中、役に入り込みすぎて、パニックで病院にかつぎこまれたという話はマジだろうな。
そして、またしても荒井ワールド。ほんと、この方は、人の「淵」みたいなものを見せる。「襞」を描く人はいるが、「淵」をこんな風にさらっと見せられる人は少ない。しかも乙女チックに。原作未読なので、どこが原作にあるものかは分からないけれど、タイヤ公園、金魚、銭湯のシーンなど、「忘れかけた乙女心」をつままれる。銭湯で祥一が優子を大声で呼ぶとこは、うちの両親が新婚時代やっていたらしく*1、ああやっぱラヴだわ!と思うことしきり。
そーいや、初・荒井晴彦はあの「Wの悲劇」なんだけども、当時大好きだった(今も好きだが)薬師丸ひろこさん演じる主人公が、男の部屋で朝を迎えて歯磨きをするシーンが衝撃だった。ただの歯磨きじゃないのよ。突然泊まったので、歯ブラシがないから、「指で磨く」わけですよ(コンビニで買えばいいじゃん、という意見は無粋)。中学生になったばかりくらいの私にはドキドキだったのだ。「大人って・・・!」みたいな。露骨なラブシーンや、性描写より色っぽいと感じたのです。「大人になって男の家に泊まったらやってやる」と心に誓ったりして。そういえば、これ蜷川さん出てるじゃん!今度見直してみようかな。
ヴァイブレータ」と比べると、精神的にはのんびり見られます。蒲田という場所だけだから、動きはあまりないけど。「ヴァイブレータ」はどこからどこまで嘘か分からない、これはその辺はきっちり分けてある。「ヴァイブレータ」では行きずりの男女の緊張感があり、こちらはいとこや同級生という、旧知の関係の親密さがあり。どちらがいいというのではないけど、どちらも荒井さんのシャープな台詞と、廣木監督のやわらかい光のなかで、心ほどかれていくような作品。
ああ、そして、廣木監督は女性を映すのがうまい!もちろん寺島さんの表情のよさも前提だけど、それを引き出し、いい瞬間を逃さない。こんないい顔、どうやって撮らせたんだ?っていうのようなのばっかり。
終わった後は、kai嬢と合流し、沖縄料理で乾杯。トークショーの内容や、大森くんやせてたよーなど報告して、あとはワールドカップ談義。フィーゴファンの二人に囲まれ、凸たん好きな私はベンチスタートな気分。しかし、北村君萌えな話や、ジダン退場の真実(某ちゃんねるVer.)も教えてもらい、夜はふけていったのでした。

*1:父が出るときに「鉄腕アトム」の歌を歌うのが合図だったらしい・・・