je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

東京国際映画祭「M」@TOHO CINEMAS 六本木ヒルズ

会社を30分ほど早くあがって、六本木へ。「日本映画・ある視点」に出品されている、廣木隆一監督作品「M」を見に行きました。

大好きな廣木監督作品というのはもちろんのこと、だ〜いすきな大森南朋さんが出演してるとあっては、これはいかなくては!わたくし、大森南朋おっかけなんです。じつわ。
映画館でchungsanに合流。つづいて、ふぁーふぁちゃん、キィさんともお久しぶりに。
映画は、公開前ですから、あまりネタバレにならない程度で感想をば。
とにかく、へヴィーです。鑑賞後のアンケートの「この作品を人にすすめますか?」という質問が一番悩んだ。肉体的に、ではなく、精神的にじわっと侵食するような痛みを、果たして普通のほとんどの人(自分を含め)、見たいと思うのだろうか。好奇心だけで、見てしまってから、知ってしまってから、しまった、というのは往々にしてある。知った後での対処は、人によって違うだろうけれど、知らなかった事にするということもできる。この作品は、そういう事も描いていた。
誰もが闇を持っていて、その闇をどう扱うか。行動に移さなくても、心の中でそれはむくむくと存在する。心の中で殺人をして、心の中で欲望を満たす。たとえ現実に行わなくても、その罪悪感はつきまとい、むしろ行動に移すことで昇華されたりする。
Mの意味は、何でしょう?いろいろ想像していたけれど、それは割とシンプルだったように思う。
相変わらず廣木さんは女性の写し方が綺麗だ。できるだけ素のままで、肌の質感やアングルで、その人のなかなか見せない部分を盗み撮る。そして、それを見ている側の視線の描き方も絶妙。
大森くんは、今回、視線の演技が良かった。あまり台詞も多くないが、視線で表現する。
他の廣木作品常連俳優陣もサイコー。戸田さんは相変わらず素敵だし(一般的な意味でなく)、ほうかさんはやっぱりひどいし(褒めてます)、トモロヲさんはいわずもがなで怖くて優しい。みんなエロくて、変態。気持ち悪くて気持ちいい。
主演の二人は新人ということで、見た目も、演技も綺麗だ。けれど、その綺麗さがどんどん色づいて、最後には匂い立ちそうな存在感。
廣木さんはこの作品で、さらにその深さを増した。いや、むしろ、この作品はもっと突き詰めて、奥の奥までぐりぐりと広げた。未見のkai嬢に「ゆれる」よりいいかも、と薦めたのは、作品が似通ってるかではなはく、「ゆれる」が新鮮で可能性を感じさせるものであったなら、これは廣木さんがその年まで積み重ねてきた年月がすべて詰まっている、もう可能性とか未来の希望じゃなくて、円熟した人が行き止まりに当たった時に描けるものだと思ったからだ。どちらがいいで比べるものではないけど、人間の悪意みたいなものを、廣木隆一は全力で身を削って見せてるのではなく、他の誰かを削って自分はニヤニヤしながら作っている(ティーチインでもニヤニヤしてたし)。行き止まりの人間は怖い。大森君が「この作品は公開したら凄いことになる、スパークする」って言ってたけど、分かる。最後のシーンの時に、ああすごいもん見ちゃったな、っていう感じがいつもよりぐぐっとあった。もしかしたら、これは表現のいきつくとこまでいったなっていう。ヌーヴェルバーグとか、映画のちょうど変わり目の作品になるのじゃないかって。ただ刺激的なんじゃなく、斬新なんじゃなく。商業的にはなんともいえないけど、私の中で怖さと感激でぶるった久々の映画。
上映後のティーチインは、監督、主演の美元さん、高良健吾くん、そして急遽参加の決まった大森南朋さん。大森くんは全身黒で、帽子&眼鏡のいつものかっこ。緊張気味の主演二人を気遣ってか、トークも滑らか。監督に久々にダメだしされたことや、印象に残ったキャッチボールのシーンのことなどを。音楽のオオヤユウスケ君が途中参加してからは、まるで漫才のようで場を盛り上げる。そうそう、音楽が良かったです。へヴィーな話なのに、時折流れる柔らかな音楽。不思議としっくりきて、主人公の気持ちにすうっと入り込める。
終わった後はkai嬢と合流して、麻布十番の「豚とんびょうし」へ。三枚肉のお店ですが、肉の種類をいろいろ選べ、味付けも選べる。三種の肉に、それぞれワイン漬け、緑茶風味、普通のと注文。そのままでも美味しいし、キムチとまいても美味しいし。チャプチェも美味しかった〜。
そして、大森ファン恒例の萌えトーク。「リアル白髪が!」「寝る時の顔が!」「ダッフルコートが!」「日本で一番伸びたスウェットが似合う!」と褒めてるのかなんなのか分からない。他にも「コトーの堺くんは放送コードにひっかかるよね」やら「桐野夏生って男?」という質問に「いや女だと思う...女のはず」ととまどってみたり。相変わらず濃いぃチーム大森でした。