je suis dans la vie

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「溺れた世界」@シアタートラム(2004/10/9)

昨日のシロップが興奮がすごすぎて、こっちを後回しにしてしまいました。そう、台風の日なのに観劇。本当は表参道でお買い物〜♪そして観劇〜、という予定だったのですが、あまりの雨に断念。つうか、店も閉まってるし(kaiさん、歩かせてごめんよう)、通りに人はいないし。ひー、大丈夫なのだろうか、といちまつの不安。なんて想いとは反対に、とてもとても、静かで耽美な舞台でした。外でものすごい暴風雨だなんて思えないくらい。
美しいものと、醜いものの二つが存在する世界。美しいものは迫害され、醜いものは美しいものを妬み阻害し、そして憧れる。
美しいカップルを匿う醜い青年。恋人のために、自分の美しい髪や歯を売り物にする美しい少女。姿も美しいが、志も魂も美しい、それがゆえに傷ついてしまう美しい男。その美しい二人を自分達のものにしようと、醜い青年をそそのかす、醜い女。
ここまで「美しい」「醜い」を何度も書いたけれど、姿かたちの美しさをモチーフに、人の心根に巣くう「美しさ」と「醜さ」という相反し共存する「もの」を描いている…と私は解釈しました。
ノローグが多く、朗読劇かと思うようなテキストなので、一瞬惑いました。ですが、すっきりした舞台、装置の代わりの映像と音楽、そして役者さんの手や足先に至るまでの所作、それらがひとつひとつ意味を持ち、そこにひとつの完全なる世界が存在していて、引き込まれました。白井晃さんの世界観はすごく好きです。私って耽美派なのかなあ・・・なんて自分が分からなくなってしまうくらい。
岡田義徳くんは若手で演技がしっかりしてるので、安心して見られました。結構、美少年なのに、役柄のためか、ヒゲを生やして猫背にして。田中哲司さんも、いつもの爽やかなお兄さん風とはうってかわって、白井ワールドの美しく怪しい光に染まっていました。これが演技というものなのでしょうね。目に見えないものも映し出すというちから。
上原さくらちゃんとつみきみほちゃんも、思ってたよりはまってました。つみきみほちゃんは、あんなに美形なのに、段々とおっそろしく見えてくる。上原さくらちゃんは最初から最後まで同じトーンで「美しい」という演技に入っていました。初舞台とは思えない存在感。白井さんの審美眼もさることながら、キャスティングの妙でした。
なにを基準として美醜を決めるか、というのはなかなか難しいものだけど、白井さんみたいに「自分が思う美しいもの」をババーンと形に出す度胸というか、その心意気がすごいと思います。そうだよ!きれいなもんはきれいだ。あー、また一真とやってほしい〜。
次の日のシロップも、「完全なる世界」を表現していたので、すごくいい流れの二日間でした。自分の世界を大事に守っている、そんな勇気に触れて、少し元気が出ました。「なにいわれてもきにすんな」そんな気持ちです。