je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

星の王子さまミュージアム

前から行きたいなあと思っていた場所。日本にこういうとこがあるというのは、星の王子さまがとても浸透しているということなんだな。
入り口にB612の広場があり、星の上に立つ王子さまが迎えてくれました。入り口を抜けると、地理学者通りが。敷地全体が、サン=テグジュペリ幼年時代を過ごしたプロヴァンスをイメージされた小さな町のようになっていて、雨の日は傘を貸し出してくれる。通りを抜けると点燈夫の広場へ。夕方には街灯に灯りがともるそう。コンスエロのバラ園では、また王子様の像がバラの花たちと迎えてくれます。小さな花だったけど、色んな種類のバラが見られて、この中でも華やかな雰囲気。
展示ホールでは、サン=テグジュペリの生い立ちが細かく説明されていて、人となりが分かる。幼少時代、飛行士になるまで、最愛の妻・コンスエロとの出会い、亡命時のこと、親友のレオン・ウェルト・・・。どうして星の王子さまが生まれたのか、自然と理解できる。特に、亡命時の事は彼の苦しみから、物語が生まれたのだと知れて良かった。序文の意味も理解できる。自筆の原稿や、絵、手紙も展示されていて、見所が多い。一番ぐっと来たのは、レオン・ウェルトにあてた手紙。短い手紙だったけれど、星の王子さまを捧げたこの人を、サン=テグジュペリがどれだけ大切に思っていたのか分かるものだった。ほとんどラブレター。
それから、物語の世界が再現されている展示ホールへ。少し薄暗い中、星のライトニングが幻想的。キツネとバラ、王子さまが出会った星の住人たち。各国で翻訳されている本も展示されていたのだけれど、表紙が微妙に違って面白い。
映像ホールでは、15分ほどのムービーを上映。簡単に物語と、サン=テグジュペリの話を説明してくれるので、読んだ事ない人、ちょっと忘れちゃった人にいいかも。ホールの前のプレルームは図書室のようになっていて、星の王子さまの本、関連本が多くあり、ここでゆっくり読んでも一日過ごしてもいいかな。
小さな教会、大きな庭園、井戸、お散歩気分でのんびりできるので、ミュージアムとしてだけでなく楽しめました。「五億の鈴」という名前のショップでは、たくさんグッズがあって、全部欲しい気持ちを我慢するのがたいへん。そういえば、物語のラストに出てくる「5億の鈴が鳴っている」という表現、ROSSOの「1000のタンバリン」を思い出してしまう。チバもこのお話好きなのかなあ。
楽しんだし、ひたってしまったのだけど、簡単に楽しいと思わせないのがさすがというか、実はムービーを見ているときに、サン=テグジュペリが空で行方不明になる前に奥さんに書いたという手紙の一節に、またまた心臓わしづかみにされてしまった。それは「良心と折り合いをつけるためには、苦しまなければならない」という言葉。行きの電車の中で、なんとなく鷺沢さんの「海の鳥・空の魚 (角川文庫)」を読んでいた。題は「何かの手違いで、海に放り出された鳥、空に飛び立たされた魚」という意味で、生き難い人々を象徴した題だった。サン=テグジュペリも、もしかしたら、地上では生き難く、空へ羽ばたくしかなかったのかも、なんて思った。
鷺沢さんのその本の解説は、鷺沢さんが「おねえちゃん」と呼んで慕っていた群ようこさんだった。とても慈しみに満ちて、生き難かったであろう彼女の幸せを心から祈っているものだった。サン=テグジュペリとレオン・ウェルトも、きっとそんな関係であったのだろう。
帰り道、すすきが一面広がっていた。もう日が落ちかけていて、夕陽に映えてはいなかったけれど、王子さまが44回も見た夕陽のことと、キツネのことを思い出した。