je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

「WE DON'T CARE ABOUT MUSIC ANYWAY...」@渋谷ユーロスペース

東京で新しい音楽を生み出す8人のミュージシャンと日本の大量消費社会を結びつけ、対峙させたドキュメンタリー映画

ドキュメンタリーとはあるけれど、音楽が主役で、それを紡ぎだすアーティストは裏方であり「狂言回し」のようにも見える。映画においては、目に入ってくる「画」の方が圧倒的に情報として強い。音は付属物となってしまう。しかし、音楽に映像を合わせている本作では、体に直に伝わってくるのはやはり音である。
昼間芝居を見て舟を漕ぎまくったので、大丈夫かなあ〜と思ってたけど、むしろ目がぱっちりして、がっつり楽しめました。
音のいい映画館だし、「轟音だから」と友人に言われたけど、うちらの後ろの席の人はずっとイビキかいて爆睡してたし(まあ、それもかき消すほどの音量でしたが)。
この映画を見ようかと思ったのは、近年の現代アートで、音や映像の作品で良質なものが多くなってきて、インスタレーションや絵画よりも興味を惹かれるようになったので。おそらくは映像編集や音声編集の技術が、コンピューターで楽にできるようになったのが大きい。コスト的にも、技術的にも、人件費の面でも。
インタビューの中でも「楽器持つより先に打ち込みしていた」というアーティストもいて、やはり時代だなと感じる。
今回のヒットは山川冬樹氏でしょう!名前だけは知っていて、「Voice over」は見てたんだけど、ご本人の姿を見たのは初めて。もっとオリエンタルな雰囲気を勝手に想像してたんだけど、ビジュアル系じゃないですかー。キュート爬虫類顔で、マッチョな体、魔術でも使えそうな長い髪。
そしてよくしゃべる、しゃべる。しかも自分語り多い。すごく引き込まれる世界観。生きてることそのことがパフォーマンスだともいいたげな。
かと思うと、やはりというか天然ボケな部分も大きいのか「ライブのときはどうぶつみたい」とほかの人に言われてるし。実際、ライブの映像は壮絶。体を駆使して、なんて言葉じゃ足りない。
話す内容も、結構理論的というか理屈っぽいというか、言葉の多い人。しょっぱなから「僕は一般的な幸せ、家庭を持ったり…(日曜日に家族で食事する云々と具体的)、そういう事は昔からしっくりこない。でもそうじゃないところで幸せになる」というような話を、とくとくと語っており、なんかもう度肝抜かれてしまいました。説得力あるし、なんか共感もしちゃうし、いろいろ思うところあり。そしてあんな綺麗な顔と、すごい目力で言われたら、納得しちゃうしー。
映像面でも、印象的なものが多い。東京という都市を切り取った、うつろいゆく景色。人気のない浜辺、風車、ごみ集積場、廃校。そして、春日部の地下貯水場「龍Q館」でのインプロは、音楽としても素晴らしかった。
私は東京生まれの東京育ちで、渋谷で生まれて、高校も渋谷、最初の勤め先も渋谷。20代の週末は夜中じゅう渋谷で遊んでいた。でも、それが日常だったので、そこの音について考えたことも、そこで住むことになんの特異性も感じていなかったように思う。故郷がない「東京もの」は、ただ都市で「生きて」というより「存在して」いるだけ。帰る場所がない、という感覚を常に持っている。実際、故郷と呼ぶには、東京という都市はもはや「トーキョー」という消費され続ける記号でしかない。
けれど、地下鉄の音、信号、車、街の喧騒、それらを改めて見て、音声を感じるとある種の望郷の念すらあったのが不思議な感覚だった。渋谷の映画館も、ライブハウスも、クラブも、建物も少しずつなくなったり、変わっていく。けれど、都市は街はそこにあり、同じような音を奏でている。

WE DON’T CARE ABOUT MUSIC ANYWAY...ORIGINAL SOUNDTRACK

WE DON’T CARE ABOUT MUSIC ANYWAY...ORIGINAL SOUNDTRACK

  • アーティスト: サントラ,Sakamoto Hiromichi,L?K?O,Numb & Saidrum,Kirihito,Otomo Yoshihide,Jaike Stambach,Umi no Yeah!!,Yamakawa Fuyuki,Goth-Trad
  • 出版社/メーカー: インディーズ・メーカー
  • 発売日: 2011/01/10
  • メディア: CD
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