je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

読書の秋

  • 「キス」キャスリン・ハリスン著(新潮文庫

父と娘の近親相姦の物語。痛い。体中が切り刻まれるような感覚。でもこれは、恋の物語でもある。支配と欲望と依存…。純粋な思いの反対側で必ず存在する本能。性的虐待と近親相姦の違い、むやみに語れることではない。でも、著者は自分の傷をえぐり出すことで、このことに決着をつけた(フィクションだが私小説に近い)。
今は幸せな結婚をして、子供に恵まれた著者は「無条件の愛は親から子供ではなく、子供から親への贈り物」だという。親ってなんだろう、子供ってなんだろう。私にはまだ分からない。悩むほどのシチュエーションもない。普通すぎるほど普通。でもそれがとてつもなく大事なもの、だということだけは分かる。

  • 「ばら色の人生〜La vie en Rose」鷺沢萠戯曲集

三作品収録。最初の作品はやはり初々しさが残る。先日見ることができた「ウェルカム・ホーム!」は完成度が高い。脚本である分、鷺沢さんの思いがダイレクトに伝わってくる。演出をした小林英武さんの解説は必読。「絞り続けること」が彼女のスタイルだった。分かってはいる。だからこんな素晴らしい作品が出てきた。でも…とまだ納得できないでいる自分がいる。読みつづけるしかない。答えはまだまだ先にある。