je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

「リボルバー」@紀伊国屋ホール

題名だけで内容は前知識いれずに行ったので、なんとなくドンパチもの(洋もの)と勝手に想像してた。ので、レトロなセットに、そうだマキノノゾミさんだもんねー、バイオレンスじゃないよな、と思いだす。
時は明治維新後の横浜、ホテル青猫亭に集う人々の物語(青猫亭のはっぴの背には猫印の家紋があるのだ)。ホテルのマダム役のキムラ緑子さんが色っぽい。北村有起哉くんとはこまつ座の「小林一茶」以来?あの時も、色っぽい役だったけど今回は明るく気風のいい姉御。色気むんむん、というより、色っぽいっていう表現がぴったり。なんかほのかにお風呂上りのふわあーっとした湿度のある感じ。
北村くんはホテルにピストル持って押し込みに入るチンピラの役。でも実はへたれで、一文無し無職の夢なし青年。マダムに「やりたきゃやりな!」と一喝され、性根を見透かされしゅーんとしてしまい、行くところがないのでホテルに居つくという体たらく。なんだか、昨今の派遣やニートやという背景も思わせるような人物設定で、北村くんはこういうちょっと情けない役が似合うなあと思う。そんで実は芯は熱いものがあって、頑張り屋さんみたいな。某ゲツクドラマのせいで、演技の切れ味が鈍ってないかのうと密かに心配してたのですが、よかったよかった。マキノさんの「青猫物語」やこまつ座の出演で、コミカルでテンポがあるものが合ってるんだろうなー。体もよく動く人だし。
M.O.P.は初見なのですが、こまつ座と似て、みなさん芸達者なので落ち着いて見られる。お客さんもいい雰囲気だし。ただ、台詞数が多いからか、楽日でテンション上がっていたせいか、土佐弁のせいか分からないのですが、ちょっとだけ台詞が聞き取りにくい時があり。方言ものは意外と見てないので、新鮮ではありました。
北村くんと同じ客演の岡田達也さんは、北村くん演ずる守上一馬と正反対の、民権運動家の熱血青年・佐伯。守上は、まじめで明るい優等生の佐伯を毛嫌いするが、実は「生きる目的のある佐伯に嫉妬している」とマダムに指摘され、さらにむーっとする。岡田さんの天真爛漫but空気読めなさ加減と、北村くんの天の邪鬼&うざがり加減のコンビネーションが絶妙で。誰が主役という芝居ではないのだけど、この二人が出てるシーンは楽しい。
岡田さんは「なんかこの人キャラメルボックスっっぽいなー」と思ったらその通りだった。ってか看板俳優だし。すいません、気がつかなくて…。いやー、しかし佐伯役はハマり役。いい人ぶりが鼻につく感じが、もー腹ただしい&憎たらしい(←役が、です)。私が北村くんのファンだからって訳ではない、と思うけど。あのちょっぴりやーな感じをわざと出してるんならすげーわ。
でも、あれが岡田さんの素だったらやだなあ…と思ってたら、カーテンコールの時に、結構象徴的な事が。北村くんがマキノさんに促され今後の宣伝をまったりとした後に、岡田さんも自分の宣伝をしたのだけど、その後にすかさずマキノさんの方に向き直って「今回は本当に楽しかったです!」ってぴょこんとお辞儀したのです(北村くんは宣伝だけ)。うわ憎たらしいことこの上ない!その時の北村くんの苦笑いと一瞬の客席の妙な雰囲気たらも。すぐに笑いに転じましたけどね。北村くんも「ずるいなあ」みたいなジェスチャーしてて。うわー、役の流れでのギャグだとしてもすごすぎる…。やはり恐るべしCB…。
しかし、そんな岡田さんが霞んでしまうくらい、私の中での北島マヤ俳優・小市慢太郎さんが出てるのだ、このお芝居。いやさー、小市さんを初めて見たのって映画「張り込み」なんだけど、これがなんとも不気味で怖い。小市さんが刑事でストーカーでひとごろし。神出鬼没でずっとあの怪しいスマイルで追ってくる。あまりにそのインパクトが強すぎて、その後に何に出ても「この人が犯人」って思っちゃうし、日本酒のCMでほんわか夫婦の夫役で出てた時もホラーに見えてしまったくらい。いやすごく好きなんです。顔も好みだし。
今回の小市さんはマダムの想い人でホテルの上客、実は時代を舵取る大物・木戸孝允役。あのスマイルも健在でしたが、大物政治家という役どころの余裕のある雰囲気に合っていて違和感なし。安心して見られた。でもカーテンコールの時はどんな顔してんだろうと思ってたら、やっぱり同じ怪しげスマイルで。いや、まだ板の上にいるしねー、役の続きだしねー。と思っていたら、終演後にロビーで物販やってた時も同じスマイルでした…。あれ素なんだ…、とあまりにショックだったので、隣で物販やってる北村くんが普通の人に見えた。慢太郎…おそろしいこ…!
余談ですが、スマイル俳優といえば堺雅人さんですが、最近あやしさが鈍ってきたのか小日向文世さんに似てきたような気がする。そういや堺さんも「張り込み」出てたんだけど(ていうか堺さん見たさに見た気がする)、その時にすでに小市さんには負けてたかと(勝ち負けでいうのもなんだけど)。
とわりと個人的な視点のことばかりに気を取られてましたが、楽しい舞台でした。マキノさんのホンは落ち着いて楽しく見られるな〜。いろいろ考えさせられる芝居も好きだけど。さりげに込められた思いとかメッセージがあったり、ただの人情ものでもない、おしつけがましくない雰囲気が、マキノさんの血筋によるものなのかな。
カーテンコールでは、みなさんによる楽器の演奏。キムラさんはトランペットだったかな。小市さんと北村くんは太鼓。マキノさんもギターでさりげに出演。ベースやサックスなど皆さんで演奏して、かなりの腕前。どうやらいつもカーテンコールはこういう形なんだそうな。ラストがピシッとしていいかも。