je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

「エレンディラ」@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

翼の生えた老人が語り始める、彼が生涯愛し続けて女性の思い出・・・。
彼の名はウリセス(中川晃教)。そしてその女性とはエレンディラ(美波)。
美少女エレンディラは、冷酷な祖母(瑳川哲朗)に召使のように酷使されていた。ある日、彼女の過失から祖母の家が全焼する。祖母はその“借り”を返させようと、エレンディラを娼婦に仕立てて一日に何人もの客をとらせる。彼女はたちまち砂漠中の評判となり、そのテントの前には男たちが長蛇の列をなす。ある日、彼女はウリセスと出会い、恋に落ちる。駆け落ちするも、祖母に追いつかれて遠く引き離される二人。恋するウリセスは不思議な力を身につけ、彼女を探し当てる。結ばれるために、二人は祖母を殺そうと企てるのだが・・・。
祖母の運命と恋人たちのその後の物語をマルケスと思しき作家(國村 隼)が、語りついでいく・・・。

もし蜷川さんであったりとか、原作者のことを良く知らなくても、素直にすごいな!と思えると思う。見ている間に、ハラハラもしないし「ん?」とも思わない。とにかく安心して圧倒される事ができる。けれど、これだけ大掛かりな芝居なので、多少は気になる部分もなくはなかったけれど、「大きな船にみんなで乗って漕いでいる」という、作り手側の、当たり前だけどとても難しい心意気が感じられた。それを一手にまとめている蜷川さんはもちろん、壮大な世界観を、臆せず、こぢんまりともまとめず、脚本にした坂手さんはすごいなと思った。坂手さんは、演出ものしか観たことがないのだが、言葉の配置も良かった。言葉数が多いけれど、言葉がひとり歩きしていない。リズムがあるし生きている。
後で原作を読み直したら、かなり原作に忠実だった。が、それを演劇にするとこうなるのだ、という坂手さんの妙にうなってしまった。そうきたかあぁ!原作にない台詞の数々、死生観もまるでマルケスが乗り移っているよう。
南米のひりつくような熱い太陽と、湿った熱気と、ときおり砂埃を舞わせる風と、大きな波の生きているような海が見えました。

エレンディラ (ちくま文庫)

エレンディラ (ちくま文庫)