je suis dans la vie

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「ウェルカム・ホーム!」@Woody Theatre中目黒

脚本:鷺沢萠、小林英武
演出:小林英武
再演となる本作。初演の時は鷺沢さんが亡くなった直後であったので、自分の気持ちが落ち着いていず、きちんと見れなかった。やはりある程度フラットな気持ちで、もう一度見られたことは幸運に思うし、この作品をいろんな人が大事に思っているのだなあ、と感慨深く思った。
普通のカップルの映子と安志が結婚を決意し、映子のおうちに挨拶に行く物語。しかし、映子のうちはちょっと変わっていた・・・。その変わってる具合が、鷺沢さんならでは!とうなる。ありえなさそうでありえる感じがするエピソード。事実は小説より奇なりとは言うけれど、本当にいそうな人々。
台詞もすごーく好きなものが多い。安志がお父さん(本当のお父さんではない)に自己紹介をする時、「安い志で安志です!」っておおまじめに言って、お父さんが「志は高けりゃいいってもんじゃないしな」って返すと事。なんか、分かるっていうか。私、名前に「帆」があるんだけど、説明しにくいのよ!前に胃腸炎で救急車に乗ったとき、ああいう時って意識を失わないように、名前とか住所も患者本人に答えさせるんだけど、その時の救急隊員のおじちゃんが「帆」の字が分からなくて、私もテンパってたから「ホタテの帆です!」って思わず言ったのよね・・・。恥ずかしくてそれ以来、そういう説明はしないけど。あ、でも、この前電話で「とよた真帆さんの帆ですか?」って聞かれたなあ。ファンだったのかしら。
上演前に中国語や韓国語でのアナウンスがあったのは、この作品がグローバルなテーマも含んでる故なんだろうけど、この前ディズニーランド行った時に中国語のアナウンスや注意書きが増えていたのとか思い出した。最近は外国人も珍しくなくなったしなー。言葉だけが人種間の違いであればいいのにと思う。
日本だって、どの国だって、いろんな人がいて、国境を越えて生きている人がいるのは当たり前なのに、どうしていろんな事が起こるんだろ。もちろん、いいこともある。映子の兄は、平和な日本にいることで享受したものを自分の国に持ち帰りたいと思ってるし、映子の母も自国では得られない愛や自由を得た。たくさん大変なこともあるけど、家族が助けてくれた。本当の家族ではないけど、一人では生きていけないもの同士が、足りないものを補い合って。損得だけじゃなくて、自分ができることとできないことをきちんと分かる事で、映子も自立できた。
小林英武さん演じる「映子のイトコ」の役が好きだ。もともと血のつながらない家族なんだからイトコじゃなくて弟とかでもいいのだろうに、そのキャラの微妙な距離感もあってか「イトコ」っていうのが面白い。実際、映子には何度も存在を忘れられる。なのに、すごーくリラックスしてて、緊張感あるシーンで風呂上りにじんべえさん姿でビールをグビグビ。小林さんもこの役が好きなんだろうな。だからこそ、出演者が初演と違う中、彼だけが同じなのかな、とか。
あえて血も戸籍もつながらない「家族」をやっているのに、映子に「本当のお父さんに会いに行け」とか、映子が戸籍にこだわるとことかも、おもろいなーと思う。普通じゃなくてもいいじゃない、と言いつつ、普通を大事にもしている。この辺は小林さんの解釈も大きいのかな。そんな時、映子が鷺沢さんに見えて、小林さんが「お父さん」に見える。すべてを受け入れる力・・・おおざっぱに言えばそんなイメージが浮かぶ。
いろいろ時の経過に合わせて台詞もブラッシュアップされて、また見たいな、次はどんな感じかなと思う。映子と安志は幸せになったかな、とか思ったり。