je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

「奇妙なサーカス」@新宿トーア

園子温監督のエロティック・サスペンス。父親に性的虐待を受けていた少女が、そのことを知った母親に暴力を受ける。そしてある時、もみ合った末に母親を階段から突き落として殺してしまう。―というのが一幕のお話。その後、少女は母親にそっくりに育ち、小説家として実体験を書いている。しかし、その体験は真実なのか、それとも・・・。
母親の意識と娘の意識が交錯する。語り手は娘だが、姿は母親だったり。娘の精神世界はおどろおどろしく、いつも血の色にまみれている。エロのシーンはすべて母親役の宮崎ますみさんがこなしているのだが、これがかなり体当たりで、色気というより鬼気迫るものさえ感じて怖かった。中盤までは一気に駆け抜ける感じで、時間感覚がなく、一幕が終わった時点で「もう終わりかー」とさえ思った。
しかし、いしだ壱成が出てきてからまた空気が変わる。相変わらずユニセックスな雰囲気、元祖ビジュアル系。年を経ても妖精の様な存在感。じわじわと狂気へ向うさまは、真骨頂。彼のダークな面をあますとこなく引き出し、完全復帰といったところか。
途中からからくりは分かるのだが、チラチラと見せているので、最後のカタルシスへの影響はない。ただ、母と子の関係に重きを置いているので、そこだけ人間的情感があり、むしろ平凡。現実にもありそうな、むしろ現実の方がハードでえげつない。監督の独特の映像美、構成、いしだ壱成の存在感がなければ、それほど珍しくない話でもある。