- 作者: イーサンケイニン,Ethan Canin,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/03
- メディア: 文庫
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柴田さんの翻訳では、オースターのものがほとんどだが、このケイニンの、平凡な中に消え入りそうなほどのきらめきを持った世界は、柴田さんのそれにとても合っているのだろう。
表題作の「宮殿泥棒」は、小品でありながら、読み終わったあとにきゅうっとなった。主人公のやるせなさと呼ぶにはあまりにも悲しい想いに、幸せを願わずにはいられない。「会計士」では、実直でつまらないくらいの男性が、女性の底にある心優しさに惹かれていくくだりが素晴らしかった。人生は長く、平坦な道のりの方が多い。その中でも、自分がいとおしく感じる瞬間は、人に言葉で伝えるにはあまりに小さな出来事かもしれない。