je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

「火火(ひび)」@シネスイッチ銀座

女性陶芸家・神山清子さんの実話がベース。
メインは息子の白血病を治すために、骨髄バンクの設立に奔走する姿と、息子との闘病生活。ただの難病ものではなく、陶芸家としての生き方をからめて描いている。
それにしても高橋伴明監督の女性の写し方は、色気がある。艶っぽい、というだけじゃない。というか、色気のある役はあまり出てこない。でも、田中裕子、池脇千鶴黒沢あすか・・・女優陣の姿は強く優しく気高い。動物のような野性味のある女性像。田中さんがくたびれてお風呂に入っているシーンと、黒沢さんの髪を切るシーンは特にキュッとなった。覗き見させてもらってるような感じになる。高橋監督の目が、どのように女優さんを捉えているか分かって、ゾクゾクしてしまう。こわいこわい、エロいエロい。さすが高橋惠子のダンナ。
それにしても、黒沢さんは体あたり系女優になっちゃうのかなあ。それはそれでいいけど、かわいい人なんで、いろんな役を見てみたい。
脚本だけ読んだ時は、台詞も少なく、シーンも細切れな感じがしたのだが、いざ画で見るとすっきり見やすかった。画で語る。神山清子さんの作品が実際に使われているのだが、それも画面を通じてでも素晴らしいことがよく分かった。伏線も分かりやすかった。台詞が少ない分、一言一言がしっかりと響く。
窪塚俊介くんも好演。つうか、うまい。技、というより、勘がいいのかな。お兄さんに通ずる感じ。自分がなりたい、と思ってなるんじゃなく、スクリーンに引き寄せらせれて来るタイプの役者さんだね。映画の空間にすっぽりおさまる。お兄さんよりガタイはいいけど、睫の長いのが似てる。
終わるころ、鼻をすする音が場内のあちこちから。私はなんとなく泣けなかった。田中さん演ずる神山さんの強さに圧倒されてしまって、涙を流す間もないという感じ。実際に母親である人が見たら、また別の感覚で見るのかな。
こういう地味ながらもいい作品をかけてくれるので、シネスイッチは好きな映画館。