je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

あの日あの場所で見た夢の話

遅死10.10 [DVD]

遅死10.10 [DVD]

「この時がずっと続いてくれたらいい」
そんな風に思うことは、ついぞなかった。
恋をしても、すぐに終わりを想像するし、楽しかったり、興奮しても、ピークの感動の中で落ちていく自分を冷静に見ているもう一人の自分に気付く。
DVDの中に、私は五十嵐隆でも中畑大樹でもキタダマキでもなく、自分を見た。
あの時、私は色々なものを抱えていた。事故に合って、左腕を骨折して、順調に回復していたとはいえ、家族にも友人にも、なんとか泣かないように、心配させないようにするのが精一杯だった。事故に関わる雑多な後始末、仕事の継続のための職場との駆け引き、金銭的な問題、動かない腕との折り合いのつけ方、週二回のリハビリ・・・。ひとつずつ、自分でクリアしなければならない現実。逃げ出す場所、吐き出す場所も、どこにもなかった。自分のせいだとか、誰かのせいだとか、それすらも考える間もなく。義務のようにこなすしかなかった日々。
そばにいた人たちは、なんだかんだ言って気付いていてくれたんだと思う。
ピリピリして、崩れそうな雰囲気を。
だから、syrup16gのライブに、私は一人で行った。
一人で行って、良かったと思う。
現実に戻るしかない多くの人たちのための、許された場所だった。
いいんだよ。そのままでいいんだよ。でも−。
五十嵐は夢の空間を見せて、少しだけ眠れるようにしてくれた。
私はあの場所にいなければならなかった。
いなければならない場所にいる。ただそれだけのことがうれしかった。

今は、もう、あの日の日比谷の想いは、探し出さなければならないほど、影をひそめてしまった。
一人で行って、一人で戻って、多分、今の私の場所には私だけじゃないって分かったから。
お風呂に入って、鏡を見ると、まだ傷跡が生々しく残っている。それはいまだに私を苦しめているけれど、裸になることは、もうそんなに怖くなくなった。裸になるのも悪くないかもね、なんて、五十嵐が自虐的に言ってくれそうで、それはそれで苦笑いしてしまう。