je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

「25時」@下高井戸シネマ

注:多少ネタバレあり!
恵比寿での上映を逃していたのだが、どうしても見ておきたい作品だった。
スパイク・リー、彼の作品をきちんと映画館で見るのは10年ぶりかもしれない。十余年前、私は山田詠美を読み漁り、ソウルミュージックを聞き、髪はフラッパーで黒い服ばかり着ていた。そんな小娘にスパイク・リーはとどめを刺した。「シーズ・ガッタ・ハヴ・イット」「ドゥ・ザ・ライト・シング」「マルコムX」。圧倒的なパワーと、音楽と映像のセンス、そしてリアリティ。LOVE&HATEを真正面から描き尽くす。スパイクの考えていることを知りたくて、文献を探したりした。アレスッテッド・デベロップメントを知ったのも彼の作品だった。
離れていたのは、多分、彼の「怒り」のパワーのせいかもしれない、と思う。いや、自分についていくだけのパワーもなかったのだ。スパイクは至極冷静だけど、いつも怒っている。自分に?世界に?
黒人を描かないスパイクを見てみたい、エドワード・ノートンをどう料理するか。今回彼のもとに「戻った」のはそんな事がきっかけだった。見始めてからすぐに、「ん?」と思った。画面を覆うゆったりとした哀しみ、絶え間なく流れるクラシカルな旋律。途中、ノートン演じるモンティの過激なモノローグはスパイク節炸裂だったが、それさえも泣きたくなるような悲壮さだった。グラウンドゼロの写し方、クラブでのブラックライト、男の友情の描き方、セックス・シーンも無し。どうしたの?あのToo Much!なスパイクはどこ?
スパイク・リーで泣くとは思わなかったが、やはりNYでの出来事は、彼にも深い影を落としたのだろうか。たまたま、行きの電車で高村薫の「半眼訥訥」を読んでいて、「阪神大震災から、本当の意味での年明けが来ていない」と記してあったのを思い出した。いつ、夜明けは来るのだろう?それでも生きていなければ、生きて進んでいかなくては。モンティは、この後どうなるのかな。生きてるなら、ちょっと幸せになってもいいよ、と思う。ノートンの「佇まい」はこの作品の静かな哀しみを集約していた。この人って役者の「狂気」を感じるけど、なんかルックスがキュートだからかうっとうしくないのよね。また、後ろ髪くるんとしてたよー!
スパイクにまたドキドキする予感。昔好きだった男が、久々に会ったらいい男になっていて「しまったな」って思うような感じ(実生活では残念ながら逆なことが多いが)。ああ、やっぱ、あの時口説いておけば良かった、みたいな。まったくがんばっていい女にならんとな、とも。岡村ちゃんも復活したし、ほんと気合いれないとね。