je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

読書再開

欲望という名の電車 (新潮文庫)

欲望という名の電車 (新潮文庫)

実家にテネシー・ウィリアムズの戯曲はいくつかあったし、母が「ガラスの動物園」を演ったことがあるので縁はなくはないのだが、読むのが結構つらくて途中でやめてしまったことが多い。なので、ちゃんと読んだのははじめてかも。
やっぱりステラは気づいてるのだよなー。そこの台詞をカットするかどうかというのは面白いとこではある。
内容が重いわりに、台詞はそぎ落とされていて(小田島さんの訳の素晴らしさもあるが)、どんな風に演じるか、役者が楽しめそうな戯曲だなと思う。ゆえに、うまい人でないと大変なのだが。
あとがきで、西田敏行もスタンリーをやったことがあるそうな。若い時だろうけど、どっちかっつうとミッチだと思うなあ。でも、いろいろ役者さんを当てはめて、キャスティングを楽しめそうな作品。市原悦子のブランチとか絶対面白いと思う。

I'm sorry, mama. (集英社文庫)

I'm sorry, mama. (集英社文庫)

桐野さんの最近の作品は、「毒」「汚」「殺」が、「もういいですうぅ〜」っていうくらいに溢れてて、でもそんなに辟易はしない(私は)。ここまで来るとギャグになりかねない部分も大いにあるのだが、台詞にリアリティがあって、けれど文芸の域も逸脱しないような線引きもちゃんとしてるので、安心して楽しめるのではある。が、やはり最近はどの作品もさっくりと人が殺されすぎて、なんかこの感覚って何かに似てる・・・と思ってたら、長塚君の作品を見たときに通じるのだよな。
この作品の主人公は、あんまり大した理由も無く、大体が「むかついた」ということでサクサク人を殺していく。我が愛する島田雅彦さまの解説にもあるように、「誰の中にもある怪物」をデフォルメして描いている。隣人の騒音、奇怪な行動をする同僚、妬み、逆恨みは誰でも日々経験して、心中で毒づきながらやり過ごしているだけ。だからしっくりくるのかもしれない。