je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

「偶然の男」@スフィアメックス(2004/7/24 matinee)

※ネタバレ注意。
長塚京三さん&キムラ緑子さんの二人芝居。演出はスズカツ氏こと鈴木勝秀さん。
舞台は列車の中。フランス語のアナウンスからオサレに始まる。座席に向かい合って座る二人。一瞬暗転。明るくなると二人は思い思いの場所へ。座席には白いマネキン(顔無し)が。交互にモノローグで進む、不思議な芝居。男はスランプ気味の作家。女はその熱狂的なファン。偶然にも同席して、女は心の中で舞い踊る。男はそんなことは知る由はない。男は理解がない周囲や、雑事についてぐちぐちと。女はあまりの喜びに興奮し、彼への愛を語りつづける。それがすべて、それぞれの心の中で繰り広げられているという設定なので、なんとも正直で滑稽。女がずっと声をかけないので、ヤキモキさせられる。じれったい。そのうち男は女に興味を持ち始め妄想、女も心の中での語りかけが暴走し始める。
結局、女が思いきって男の著作を手にとって読み始め、男が声をかけるのだが、本当に最後の最後だけ。それまでがものすごく長いので、やっとほっとする。男は女の深い理解と愛情に触れ、やっと微笑む。
自分としては「恥ずかしい!」と思ってしまう題材だった。すっごい好きな人(有名人)に実際にしかも偶然に会う、なんて婦女子の夢でありませんこと?これはすっごい純愛物語なんだなと思った。セカチュウなんて目じゃねえっす。
本や音楽、映画、芝居といったものに救われる、ってないかな?それでその作り手をもっと知りたくなって、見て読んで、現実の生活の人間よりも傾倒してしまう、っていうのはバカみたいだと思う人もいるかもしれないけど、現実の方が残酷だったりするし。
私にとっては夢の人は美里ちゃんなんだけど、多分、実際に会うことがあったりしたら、絶対失神してまう。西武球場で毎年あれだけワンワン泣いてるんだもん。もっと近くなんて「ひええええ!」ってなもんですぜ。あ、大森君に実際会った時は泣いたなあ、そういえば。
それだけに、緑子さんの演じる女性の気持ちががっつり分かります。ええ、美里ちゃんに心の中で語りかけたりしてますけど、何か問題でも?「美里の話をするときは恋人の話のよう」と友人に言われましたけど、何か?
閑話休題。スズカツさんの演出は、いつも(といっても3回目くらいですが)不思議な感じがする。マネキンとか、石をしきつめたセットとか、いろいろ細工はあったりするんだけど、その事よりも、作品に秘めた思いがじんわり伝わる。「BENT」のラストの時もだけど、今回のラストも、なんだかほわ〜んと暖かく切ない気持ちにさせられる。「ちょっと自分で考えてごらん」と、軽くつきはなして、でも緩く手をつないでるような。
長塚パパは枯れたおじさまのアイロニックな雰囲気がなんとも素敵。元祖「課長」だったな、そういや。緑子さんは女性の可愛らしさを厭味なく。まさに「12歳の少女のよう」でした。あんなジェンヌになりたいわん。
全然関係ないのだけど、最後の長塚さんのやわらかな微笑のシーンで、鷺沢さんのことを思い出してじわっとしてしまった。もし鷺沢さんにこんな素敵なファンとの出会いがあったなら・・・?でもこれは考えても仕方ないと気づき、とても悲しくなった。それに、彼女は知っていただろうし。