je suis dans la vie

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「恋する妊婦」二回目@渋谷シアターコクーン

ということで、仕事を早退して行ったのだけど、むちゃ眠かった・・・。昼に行った「数奇屋バーグ」で、おなかいっぱいになったからか・・・。しかも、隣の席のおじさんもがっつり寝てて、つられた(でもこのおじさん、休憩時間に、みっちり芝居の感想を紙に書き込んでた。見てないのに!)。
しかし、朦朧としながらも、やはり気になる岩松芝居。
今回はネタバレ多少含みます。
コクーンでやるより、本多とかの方がいいのでは、という意見が多いようだが、セットの構造上(実際の舞台に、旅芝居の舞台と客席)どうしても大きいところでないと難しい。それに、その遠いかもと思える距離感がまたいやらしい。私たち観客は、楽屋裏の芝居を見ているわけだが、距離があることで舞台との一体感が生まれにくく、それが故に余計に「楽屋裏をこっそり覗き見ている」感じになる。今回私は2階席の一番前で、言うなれば芝居小屋の後ろの照明係のような気持ちだった。
台詞の中に、「楽屋のモニター入ってないかな」と、内緒話をするのが聞こえてないか気にするシーンがあるのだけど、まさに観客だけはすべて見てしまっている。その辺の距離感を意識してみるとまた面白い。
おそらく若い役者さん目当てで来ていた女性客が「セットが遠すぎる」とぼやいていたのだが、最近の男の子は顔がちっちゃいからね!キョン2も本当に小さくて、子供のように見えるときさえあった。そういう面で言うと、顔のでかい風間さん(暴言)、顔も体もでかい大森くんはちょうどいいのよねー!
大森君といえば、今回はなかなか好演している。映像の人なので、どうしても大きい動きを必要とされる舞台では固くなりがちなのだが、まあまあ良かった(←えらそう)。多分、岩松さんにみっちり芝居つけられたんだろうなあ。言われた事はきっちりやるタイプっぽいし。自由にやんなさい、っていう演出家だとまだつらいだろうなとも思う。大体、舞台役者は反射神経でやってるから、経験値が少ないとつらいだろう。
風間さん、砂羽さん、良々くん、紙ちゃんなんか、10回中10回同じ事できそう、っていうかできてるし。砂羽さんは、歩いてる位置とか立ってる位置とか、きっと同じだろうし、風間さんもいつも同じ声音で同じ音量で言ってるんだろうなー。大森君と比べてもしゃーないのですが、やるならあそこまで行ってほしい。苦言ではなく期待です。
意外とうまいかな?と思ったのが奥田さんとこの娘さんのさくらさん。芝居小屋の隣に住んでて、旅役者のおっかけの女の子。かわいいけど、うざい。もうちょっとウザ感があってもよいけれど。そういや、キスをせまられるシーンで「だめ!お父さんに見られちゃう!」っていう台詞があり、初日にお父様(奥田さん)がいらしてたのですが「今まさに(実の)お父さん見てるから!」と、その夜の奥田家で話題になったであろう。まさか、岩松さん、そこまで見込んで書いてないよね?この作品初演じゃないけど、アテガキのようで笑えるとこ多い。
ウザいといえば、大森君演じる橋本の兄さんの妻・波江。こういう女とは友達になりたくないが、しかし果たして自分の中にもこういう面があることに女性は気付くのでは。暴力を振りたくなる女性のタイプがあると言うけど、まさに、である。そうだよ、いらねーっつってんだから、お味噌汁を何故持ってくる・・・。しかし、芝居だからというのでなく、こういうシーンは実際の家庭でもありそうだ。KYが流行語になったけど、日本って「おくゆかしい」とKYは微妙なラインだなあと思う。
風間さん演じる座長が、この女の矛盾点をばっさり斬ってしまうシーンは、なかなか胸がすくのだけど、反面座長もむちゃくちゃだなあと思う。生きて無くてもいい、光なんかなくてもいいなんて言い放つ(ついつい五十嵐を思い出してしまったのだが)。でも、座長の光は「照明」とか「太陽」であって、抽象的な概念は彼にはまったくない。そのくせ、福引で7回当たると「そんなことで運を使っていやだなあ」と言ったりする。奥さんがもしかしたら他の男の子を宿しているかもしれないのに、心広く鷹揚にしている。実は誰にも興味がないのかもしれない。何かあっても「それはそれでいたしかたない」という感じで、アタフタせず、落ち着くとこに落ち着けば、それでよい。座員が辞めたいといっても、それはそれで仕方ないと思ってしまう。なんかいちいちうちの父親が言ってそう&やりそうな事ばかりで、あーあと思ってしまった。多分、うちの父親もあんまり悩んだりしないんだろーなーと思う。矛盾があっても、プラマイゼロくらいでいいよと思うタイプ。
まあ、そんなこんなのドタバタも、結局は日常の中のものなので、実は繰り返し繰り返し、同じような事が起こっているのだ。砂羽さん演じるさつきや、副座長の橋本はなんとなくその繰り返しから来る矛盾に悩んだりイラついたりして、ちょっと流れに逆らっているだけなのだ。それで死んじゃったり、白髪になったり、怪我したりもあるけれど。
初日では、舞台上に残された懐中電灯がグルグル暗闇を回転してて、袖にいってしまった恋する二人をさらにエロティックに演出していたが、この日は懐中電灯は倒れたまま、あまり動かなかった。ああ、やっぱり懐中電灯が気になる私!まんまと岩松さんの術中に入っていますね・・・。