まだ公演が続きますので、ネタバレなしで。
やっぱり、北村有起哉くんは主演の時が光る。いや、そうじゃない時も素晴らしい。でも、板に乗ってる時の輝きは群を抜く。この人って舞台に愛されてるんだろうって思う。でも、他の人の輝きを食ったり、消してしまう光じゃない。周りの光に合わせて、その時その時の光度を変える。そこがすごい。今回、こまつ座、時代劇、井上芝居ということもあって、やはりなかなかレベルが高い。けれど、それに臆することなく、生き生きと演じていた。チャレンジするのは、とても大変だ。自分の器を知っていれば、置きに行く演技をしてしまっても仕方ない。でも、それをしない。また殻を破った(まあ、この人に殻とかはないんだけど)。
脇役陣も芸達者がそろう。キムラ緑子さんは本当に愛らしく、そしてセクシー。女の業の深さと、純粋さと、はかない切なさを演じ分ける。高橋長英さんはいぶし銀の落ち着いた演技。影の主演。北村くんにとって、恐るべき、でも頼もしい連れとなった。
井上ひさしのホンはやっぱり面白い。軽妙で、深く、エロティックで、そしてエンターテイメント。日本の芝居って面白いよ、と改めて感じた。そして、言葉は音なんだな、と考えさせられた。音楽と同じで、台詞も空間に、人に乗って奏でられていく。ホンが素晴らしいと、演者はそれをどう形にするかきっと慎重になるに違いない。北村くんが緊張感の中にも、台詞のひとつひとつを楽しそうに発している事で、それはものすごく伝わった。
五七調の台詞はなかなか難しい部分もある。長いのに、テンポがあって、それぞれの噛みあわせが重要になる。崩したらそこでペースが変わる。初日のせいか、とても緊張感があった。公演が進むにつれ、きっとまた練られたグルーヴができるに違いない。楽日も行くので、今から楽しみ。
二部構成で、3時間を超える公演時間なので、結構つかれる。言葉も多いし。でも、カーテンコールで、北村くんの満足そうな微笑を見て、ああ良かったと思った。頑張って見る、っていうのはどうかなと思うけど、しっかり見ないと、乗り切れない。
内容はほんと素晴らしく、満足。それとは別に、本当に北村くんのいい顔がいっぱい見られて、ひとり悶えてました。すいません。純粋な芝居ファンの方にはお恥ずかしい限りですが。でも、本当に、あのニーッっていう、歯並びのいい笑顔を芝居で見られると、嬉しいのさ。この人の笑顔、大好き。パンフの写真も最高。そして、着物姿のなんと粋なこと!北村くんは手足が長いので、時折見せる生足がとってもセクシーでした。いけないとは思いつつ、そんなとこも堪能してみたりして。それと、劇中劇の形をとっているので、北村くんは小林一茶と、札差の五十嵐俊介の二役を演じているのだけど、「五十嵐の旦那」と北村くんが呼ばれてるわけですよ。北村くんがイガラシ・・・。個人的にツボでした(分かる人にしか分からない)。