je suis dans la vie

ライブとか映画とか芝居とか。ネタバレ有り〼。

配信観劇その24『夏の夜の夢(A Midsummer Night’s Dream)』(Shakespeare’s Globe, 2013)

シェイクスピアズ・グローブの無料配信、最終は『夏の夜の夢』。6月28 日まで(時差あるから日本はギリ月曜の朝まで見られるかな?)


今回もid:saebou 先生こと北村紗衣先生の講義をTwitter(  #夏夢グローブ)で、そしてブログ👉非常に正統派の上演~グローブ座『夏の夜の夢』(配信) - Commentarius Saevusを参考に観劇しました。ありがたいことです。

タイトルずっと「真夏の夜の夢」だと思ってましたが、midsummer は夏至なので実は6/20頃だそう。映画『ミッドサマー』のヒットもあり、認識が広まるかな。

演出は全体的に近世風でスタンダードな夏夢。

ヒポリタとティターニアを両役とも演じるのはグローブの芸術監督ミシェル・テリー。この方はグローブでハムレットを演じており、ハスキーボイスでマニッシュな魅力の俳優。

(その時の感想はこちら👉配信観劇その①『ハムレット』(グローブ座,2018) - je suis dans la vie

ヒポリタもティターニアも、支配的な男に負けない意志の強い、たくましい女性像。冒頭の演出の、アマゾンが負けて結婚を屈辱と表現するあたりにも、ミシェルの役作りや雰囲気が合っている。ただ強いだけでなく、怒りやその裏にある傷ついた心、本来の情の深さなども表現している。今回はヒポリタの戦いを最初にフィーチャーしてる演出なので、彼女が支配された屈辱を、ティターニアの怒りが代弁してるように見える。

シーシアスとオベロンの両役を演じるのはジョン・ライト。筋骨隆々なたくましく、かなり強面な雰囲気のオベロン。この方、かなり体幹が強く、パワーヨガのハードなポーズをとったり、アクロバティックで肉体派。腹筋も割れまくってました。男性性を強調しすぎか?とも思ったけれど、ミシェルの演技と呼応してるし、彼女の演技プランを結果引き立ててよかった。

オベロンとティターニアの夫婦喧嘩は、倦怠期の夫婦の駆け引きっぽくやるのがあるけど、こういうパワーあるガチな感じもありか。

ハーミア&ライサンダー、ヘレナ&ディミトリアスは設定通りの印象。ライサンダーがかなり軽いノリで頼りなさげで、それは親は結婚反対しますわという感じ。対してディミトリアスは堅実そう。

ハーミアとヘレナはルックス、雰囲気、性格も正反対とはっきり見せている。

そしてヘレナとハーミアの関係は、幼なじみで仲良しだが、根底にお互いへのコンプレックスも見え隠れしている、という部分を丁寧な演技で見せている。ヘレナがなぜハーミアの駆け落ちをディミトリアスに言うのか?はわりと謎なのだが(言わなければディミトリアスは失恋するのだから、ヘレナにとってはチャンス)、心のどこかにハーミアへの意地悪な気持ちがあったのではと思う。何もかもめちゃくちゃにしてしまえ!死なば諸共という破滅的な発想(実際はちゃめちゃになるし)。女同士の仲良しすぎるがゆえの複雑で繊細な関係をよく表現していた。もっと掘りさげてドロドロさせる演出もありかとは思うが、このヘレナはマゾっけがありちょっと天然で、報われない恋に狂うさまを観客に同情させない程度にほどよく面白く演じている。ハーミアは空気読めない可愛いお嬢様で、こちらはを好感度あるようなないような雰囲気が出ていた。2人ともクラスにいるいる、という親近感もあり、どちらがいい悪いも感じさせない。

パック役のマシュー・テニスンは、年齢不詳、性別不明な透明感。若い頃の成宮寛貴的な感じも。蜷川さん好きそう。

他の妖精らもアースカラーの衣装と羽根・毛皮・枝・ツノなどの装飾と、自然なものに馴染む雰囲気だが、ダークカラーやラメキラキラのメイクで、可愛らしいというより「夜に蠢く異形のもの」という少し怪しい雰囲気。

パックはオベロンのお稚児さん的な表現もあり、公式のバナーですら2人が見つめ合ってるので、ここは見どころなんですかね🤤(いいぞもっとやれ)。

f:id:star-s:20200628205514p:image

ところで、パックといえば「ガラスの仮面」でマヤが月影先生に受けた特訓を思い出しますよね(分からない方は40代以上の少女漫画好きに聞いてください)。その特訓が「多方面から飛んでくるボールをロック音楽にあわせて避ける」というトンデモ設定。それでパックの身軽さを体得し、マヤは敏捷でリズミカルなパックを熱演するエピソード。特訓中に「パックなら球をかわしたでしょうね」と微笑む月影先生、今ならそんなわけねーよ!と言いたい。蜷川さんだってそんなことしません。そしてあれ野球ボールだったんだけど、まさか硬球だったのかな…。千草ならありえそうでこわい(白目)!

閑話休題

こちらのパックは極端に飛び跳ねまくったりはしないけど、肉体派オベロンに合わせてそこそこよく動いてました。↑の画像の姿勢はオベロンの腕力&体幹、パックの体幹&腹筋がないと無理。テニスンは細いけど背が高いから、それなりに体重はありそうだし。2人のからみはエロティックだけど、フィギュアのアイスダンスのような華麗さもあり、身体能力の高さがうかがえる。

ボトム役のピアース・クイグリーは前の配信『ウィンザーの陽気な女房たち』のフォルスタッフ役で素晴らしいコメディアンぶりだったけれど、今回も本筋を食いかねない存在感。

(その時の感想はこちら👉配信観劇その19『ウィンザーの陽気な女房たち(The Merry Wives of Windsor)』(グローブ座、2019) - je suis dans la vie

この人が出てるとこは今回もまたまた「8時だヨ!全員集合」でした。志村けんであり、いかりや長介であり、今回はカトちゃんのちょっとだけよ〜的なシーンもあり。職人劇団の劇中劇のところはクウィンスらもボケっぷりが絶妙でノリノリ。職人全員がボケにボケ倒して、最後ははちゃめちゃ。長さんの「ダメだこりゃ」でオチつけてもいいくらい、ドタバタで笑いが笑いを呼ぶ振り切った演出。

パックが妖しい雰囲気の美少年なので、その分ボトムが道化的な狂言回しを担うことになり、遠慮なく思い切り演じているよう。ロバの頭をかぶってるとこも、表情が見えないのに、細かい仕草で笑いを誘うのも絶妙。グローブのバカ殿さま、魅力的で面白かった。ヒポリタ役のミシェルも本当に笑ってたっぽいし。

さい芸なら吉田鋼太郎さんにやってほしい。きっとご本人はイケオジ・オベロンやりたそうだけど。オベロンは横田さんかな?阿部寛さんもいいね。

ラストは妖精も交えて華やかなダンス。

いつもならそのまま明るくカーテンコールだけれど、しっかりパックが締めの口上を。そして幻想的な音楽とオリエンタルな舞い。ここもカンフーかヨガのようなポーズで、オベロン役のジョン・ライトが特にきまってたのでこの辺のアイデアは彼ありきかも。

ドタバタ喜劇だけれど、一人一人の役作りが丁寧で、スタンダードな演出の中にも役者の個性が光るプロダクションでした。

次はナショナル・シアターの夏夢。

こちらは7月2日まで配信。

こちらもTwitter講義参考に近日中に見ます。