ナショナルシアター、6/4〜6/11の配信。思い出し感想。その時取った殴り書きメモ見て書いてますので、かなりむちゃくちゃです。
トムヒことトム・ヒドルストンさん主演。
TLにトムヒとかトムホとかよく流れてくるので、トムハやトムヘ、トムフもいるのかしらと思ってました、すみません。
トムヒさんの作品を見たことがほぼなくて…そしてこのタイプのイケメソ俳優さんにハマる事がほぼなくて…。そして今一番好きなイギリス人俳優はサイモン・ラッセル・ビールなんですよね〜。いやサイモンはかわいいんだぞ!英国の至宝なんだぞ!(突然の脱線)
とはいえトムヒ評判は知っており、楽しみにしてました。映画で人気が出ても、舞台を大事にしてる俳優であり、ハムレットの評判も良かったトムヒ演じるコリオレイナスなんて面白いに決まってる。ある意味ハムレットより難しい役。ご本人もアプローチの難しさについて語っており。
What makes a great, tragic hero? @twhiddleston describes Shakespeare's Coriolanus as a man who has extraordinary courage.
— National Theatre (@NationalTheatre) 2020年6月7日
He’s speaking with the director of @DonmarWarehouse's production, @JosieRourke, now streaming with #NationalTheatreAtHome. pic.twitter.com/B7w45qqKT3
ストラトフォードフェスのコリオレイナスは個性的なルパージュ演出が際立ってたけれど、今回はシンプルに俳優の演技を楽しみました。
(ルパージュ演出のコリオレイナスの感想はこちら👉配信観劇その12 “コリオレイナス (Coriolanus)” (Stratford Festival, 2018) - je suis dans la vie)
舞台は平場に赤いラインの四角が引いてあるだけで。あとは10脚くらいの椅子、梯子が後ろの方にあり、背景のプロジェクションで場面変換するのみ。
照明は暗めでスポットライトをメイン。主演をさらに強調できて、トムヒさんの存在感際立たせてよい演出。
上から水がドバー(トムヒさんシャワーシーン)、血のりがドバー、戦の中の土ぼこりが散らばったり、シンプルなセットの中にリアルな表現がチラホラ。戦争の話なので、血生臭さを印象的に見せていた。
演出やセットはこのツイートで色々見られる。トムヒさんの血まみれや水浴びシーンも。
👊⚔️ The city of Rome calls once more on her hero and defender. 👊⚔️
— National Theatre (@NationalTheatre) 2020年6月5日
The @DonmarWarehouse's #Coriolanus, with @twhiddleston in the title role, is now streaming on YouTube: https://t.co/mILRrVPRLR #NationalTheatreAtHome pic.twitter.com/CpG4GrVAVg
音楽は場面転換に声や音楽サンプリングしたもの。囁き声がコリオレイナスへの悪口や噂話のように聴こえて、彼が追い詰められる感じになっていた。
梯子は城壁を越えるコリオレイナスの勇敢さを象徴するセット。部下は逃げ、彼は血まみれになり勇敢に一人で敵陣へ挑む。これ、コリオレイナスの心象風景でもあるんですかね。その梯子を登った事で、後にローマとヴォルサイ軍の間で揺れ動く。彼が登っていたのは果たして、なーんて。色々受け取れそう。
トムヒさんは、複雑だけれど情感ある魅力的なコリオレイナスを演じてました。
細マッチョな鍛えた体にタイトなパンツにぴったりした鎧風のベスト、細い柔らかそうな金髪、うるうるの透き通ったしかし意志の強そうな瞳。
このぱっと見だけでも分かるラブリーハンサムさんが、とっつきの悪いキャラをどのように演じるのか。いやーほんとによかった。集中して堪能いたしました。
前述したように、戦争での勇敢さを魅力的に余すことなく全力で演じた後、ママンにそそのかされて選挙に担ぎ出された時に見せる慇懃無礼で偉そうで、媚び売るのが下手、民を感情のままに罵ったり、味方もドン引きするほどのダメな部分を、コリオレイナスという複雑な人間の性格の一部分として見せる自然な流れを作っていた。
ここ、うまくやらないと最初と全然違う人みたいになってしまいそうなんだよね。それかただ戦争好きな怒りっぽいだけの人間になってしまう。母や妻はもちろん、敵のオーフィディアス、ずっと味方してくれたメニーニアスが惹かれるだけのキャラという説得力に欠けてしまう。かといって魅力的すぎてはコリオレイナスの悲劇は表現できない。観客も踏み込めないくらい、人への拒否感や孤独感がこのアンチヒーローの魅力。
トムヒさんはその拒否の演技と、人と呼応する演技の振り分けがうまかった。
母ヴォラムニアと妻ヴァージニアの対比も、いわゆる嫁と姑感ありつつ、コリオレイナスのキャラを形作る演出。
母ヴォラムニアは命より名誉が大事!という母でコリオレイナスの軍人としてのアイデンティティを共有している一卵性親子。コリオレイナスは母に翻弄されつつ、その意思を尊重しているし愛情あるのが分かる。妻ヴァージニアは姑が息子が戦で負った怪我を名誉だと喜んでるのを見てドン引き。姑とは逆に、彼の死を常に恐れているが、最後の方は姑と息子を支えて、夫も受け止める強い女性のイメージであった。
怒りのシーンがどうしても多くなるので、コリオレイナスの哀の部分をこの2人の女性の関係を通して、序盤から丁寧に見せていたと思う。ここもうまくやらないと、マザコンで妻を蔑ろにする非家庭的な軍人としかならない。
オーフィディアスとの関係は、敵で味方で、最後は…となるので、同性愛的な表現になるのは定番なのかしら。ルパージュ演出はオチもそんな感じだったけど。こちらではオーフィデアスにブッチューされるんだが、なんとなく勢いまかせな感じ。ブロマンステイストではある。
コリオレイナスを陥れる護民官のシシニアスが女で、ジューニアスとは男女の仲という設定はなまぐさくてよかった。
アクションシーンもそこそこあって、トムヒさんは体張ってるシーンが多くて大変そう。最後は宙吊りにずっとされてるし。
オーフィデアスとの最後の決闘は自分から剣を放って、死を覚悟してるように見えるのだけど、あれは戯曲通りかな?最後は哀しみの感情を成るがままにほとばしらせ、おおこれがトムヒの魅力なのだろうな〜と。
悲劇に駆け抜けるヒーローが魅力的な演出。主演の魅力ありき、ではあるけど、全体的にもすっきり筋が通ってる演出で楽しめたし集中して見られました。