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配信観劇その12 “コリオレイナス (Coriolanus)” (Stratford Festival, 2018)

配信観劇も12本になってしまい、もう番号ふらなくてもいいかもとか思いつつ。数年後、こんなんあったね〜という記録になるのかな、とか。

今回はストラトフォード・フェスティバルの『コリオレイナス』。

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今作の配信は終わりましたが、他にもたくさんシェイクスピア作品見られます。

なんとなーく話は知ってるけど、軍人の政治的な話というイメージが強く、シェイクスピアの中でもあまり興味を持てなかった。しかし食わず嫌いもなんなので、この機会に見てみました。

おお、なんとロベール・ルパージュ演出ではないですか〜。ルパージュ演出は気になってて、7月にコクーンで広島を題材にした芝居が上演されることになっていたので行こうかなと思っていたのでした(中止になったけど)。

最初からコリオレイナス銅像が突然喋りだすというビクッとするような演出。

全体的には現代的な衣装やセット。軍人は現代の軍服、政治家は普通のスーツ、女性も現代の装い。

セットはラジオ局、バー、地味な事務所など現代設定だが、ハイテクだったり現代デザイン的なモード感があったりとかはない。リアルな雰囲気。

背景はプロジェクションマッピングを多用して、これまた見事だった。ローマ軍のエレベーターのドアが開いたと思ったら、ヴォルサイ軍の部屋の窓になる。コリオレイナスがローマを追放される時は車を運転しているのだが、舞台上の車(ほんもの?)が実際に走っているように見せる。

空間の使い方が本当に面白い。舞台の奥行きを二重(三重かも)に使う舞台装置になっている。手前に2つ部屋がありそこでローマの執政官の事務所のやりとりが行われたと思えば、中心から分かれて奥のスペースからローマ風呂が出てきたりバーが出てきたりする。奥行きがせまいせいで人の動きは基本は左右にしかない。近いところの奥行きは段差を使ったりはする。奥行きを大きく使った動きがない。しかしそのため、プロジェクションマッピングの効果がより際立つ。

この辺のセットの動きは、思わず「8時だよ!全員集合」のドリフのコントを思い出してしまった。あれも最初に大きなセットでコント劇して、そのまま移動して後ろにバンドが出てきて他のコーナーになる。生放送だからとにかく効率的にやってたんだと思うけど、毎週しかも違う会場でやってたりしたの、先進的だドリフ。今更ながらすごいの見てた。

話がそれましたが、ルパージュの演出は限られたスペースでどれだけ世界を広げられるか。まるでバーチャルリアリティの世界に入ったような感覚。映し方もあるけど、観客の声がしなければ本当に劇場なのかしらと思いました。暗転もワイプアウトみたいなやり方だし。映像で見てこれだと、実際はどんな感覚だったのだろう。

 

コリオレイナスはたくましく、怒りのパワーが強く、男らしい設定。家族への情愛もあり、優秀な軍人だが、一本気であまり政治家としては狡猾ではない。

ローマ軍は彼のそこを利用し翻弄する。冷静で狡猾な政治家たちである。

敵のオーフィデアスはコリオレイナスに強い魅力を感じている。男性同士の肉体的な愛情を示す演出にもとれる。オーフィデアスは側近とどうも同性愛の関係であるかのような演出もある。はっきりと出てこないが、最後のシーンがオーフィデアスの寝室で、2人の上着がそこに置いてあるのはそういう意味なのかなと思った。

ルパージュの演出は人も舞台の絵の中の一部という感じで、キャラクターの誰かに強く共感するようにはしていないが、エンタメ性と美術的な面白さがあり、落ち着いて楽しめた。